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ネガティブな感情との付き合い方について

皆さん、おはようございます。暑い日続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。 私は、塙厚生病院で臨床心理士をしております佐々木と申します。今日は、ネガティブな感情との付き合い方についてお話をさせていただきます。 新型コロナウィルスの感染拡大の影響が長期化するなかで、多くの人がストレスを感じて、様々な不安や恐怖を抱えていると考えられます。不安や恐怖を心に抱えたままでいると、そのようなネガティブな感情は、いつまでも消えないだけではなく、ますます大きくなり、心身の不調を招くことがあります。 わたしたちは、普段、心の中のネガティブな感情を、誰かに聴いてもらうことで外に吐き出したり、発散したりすることを意識せずに実行しています。 不安や悲しみなどを抱えているとき、「誰かに話してスッキリした」そんな経験を持つ人も多いのではないでしょうか。 このように、心にためこんだ不安や恐怖、不快感を解消することを、カタルシスといいます。カタルシスとは、ギリシャ語で「浄化」を意味します。カタルシスが実践できる人は、友達と愚痴を言い合ったり、スポーツで汗を流すなど自分なりの方法を持っています。 しかし、つらいのに、つらいと言えないなど自分の感情を外に出せない人は、心の健康が悪化してしまうおそれがあります。 不安や恐怖といったネガティブな感情にふたをし続けると、本来の自分らしさを失ってしまったり、溜まった感情が爆発して攻撃的な行動に走ってしまうことがあります。もしくは、こころが疲れて「燃え尽き症候群」になる人もいると考えられます。 つまり、感情にふたをして抑圧しても、どこかに消えるわけではなく、ため続けると健康リスクにつながるおそれがあります。 ですから、ネガティブな感情を抑圧したり、無視したりするのではなく、その感情とうまく付き合い、ストレスやネガティブな感情で落ち込んだ状態から回復することが重要となります。 では、ネガティブな感情との付き合い方について、お話をさせていただきます。まず、基本となりますのが、ネガティブな感情についての正しい知識を身につけることです。実は、ネガティブな感情はポジティブな感情よりも強く残ると言われています。例えば、ネガティブな体験はよく憶えていて、ポジティブなことはすぐに思い出せないことはないでしょうか? これをネガティビティバイアスといいます。バイアスというのは、物事の捉え方の偏りという意味です。これは私たちの脳の機能によるもので、脳にはネガティブな情報ほど長く記憶に残す働きがあります。この機能は、もともと人類が進化する過程で、災害や事故から身を守るために発達したといわれています。このような事実を知識として身につけることが、ネガティブな感情と付き合う上での基本となります。もし、嫌な出来事を繰り返し考えてしまい嫌な気分になった時には、「ネガティビティバイアスがそうさせているのだ」と考えることによって、その苦しさを少しでも和らげることができるでしょう。 そして、ネガティブなことばかりを考えたり注目したりせず、ポジティブな面にも目をむけていくことがのぞましいと考えられます。 アメリカの心理学者のマーティン・セリグマン教授は、毎日「3つの良いこと」を書く方法を考案しました。このことにより、幸福度が高まるという効果があるそうです。例えば、今日楽しかったこと、自分ができたこと、感謝することなどを書き出してみることをお勧め致します。自分の生活の中のポジティブなことに目を向けて、そのことを書き出してみることによって、悪いことばかりではないとの気づきが得られたり、冷静に振り返ることで、できたこと、楽しかったこと、感謝することがみつかります。ポジティブな出来事を認識できるようになれば自然に毎日の幸福度は高まります。 最後に、現在のコロナ禍では、不安や恐怖を感じることは特別なことではなく、むしろ自然な反応です。もし不安や恐怖が軽減されずに生活に支障が出たり、自分で対処しきれない時には、専門家に相談することや、病院で診察を受けることをお勧めいたします。早めの受診は、早期回復が期待できますし、深刻な症状に陥らずにすみます。 それでは、最後までお聴きいただきましてありがとうございました。今日もさわやかな一日をお過ごしください。