以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

果たして福島市は大丈夫なのでしょうか
2011年6月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 最近はようやく天災なる余震の程度は軽くなりましたが、人災とみられる原発事故による健康被害の問題については、まだまだ不安に思っている方が多いのではないでしょうか。
 放射線の人体に対する影響の強さは「シーベルト」で表します。福島市の放射線累積線量は、原発事故68日目に当たる5月19日現在 1.104ミリシーベルト(mSV)と発表されています。私の試算では、このまま来年の3月までの1年間浴びたと仮に仮定した場合、5.93mSVと出ました。
 一方、自然界には常に存在する放射線(通常環境放射線)があって、これを私たちは常に浴びているわけですが、福島市の一年間の通常環境総量は、私の計算では平均 0.4mSVとなります。つまり現時点では、このまま放射能の強さが維持されたとすれば、年間で通常より15倍近く放射線を浴びる計算結果となりました。これでは不安になるのは当たり前ですね。
 さて、5月23日福島市医師会による「放射線による人体影響」という主題で勉強会がありました。講師は以前に広島大学放射線医学研究所で研究し、チェルノブイリ原発事故の医療にも参画して、放射線障害に詳しい医師です。ここで私は計算上の値から見た不安を質問してみました。先生の見解は次の通りでした。
 ICRP(国際放射能事故防護委員会)による2007年勧告では、「放射能事故収束中の被曝基準は1年間1~20mSVまでとなっている」ので、今後新たな爆発事故がない限り、心配ないレベルだとの見解をいただきました。
 また、子供を持つ親が我が子に将来どのような障害が発現するのか心配するのは当然でしょう。この問題では、先生は日本の原爆被爆後65年間の統計とチェルノブイリ原発事故後30年のそれとを提示し、結論として今のレベルではパニックになるほど心配することはないと述べておられました。これでひとまず一安心したことをお伝えしておきます。
 IRCPが示した数値に対して甘過ぎるという批判があるのは承知しておりますが、あまりに理想的すぎる数値は非現実的で、この場に至ってはかえって混乱のもとになると私は考えます。
 それにしても、避難地域は別にして、福島市や郡山市が県内のうちでも高い方なのに局地的な情報が少ないのは何故でしょうか。もう少し福島市の一般市民を対象にした分かり易く、詳しい情報をPRしていただきたいものです。