以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

今年の抱負「禁煙」にチャレンジしてみませんか
2012年1月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
明けましておめでとうございます。昨年は一般人から見れば予想もつかないような転変地異があり、大変な年でありました。今年こそ心を新たにして希望の持てる国にしたいものです。
 さて、皆さんの中には今年こそ何か一つ達成したい目標を立てて頑張ってみようかと決意を新たにしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。そのような方でタバコを吸っている方に、私は目標の一つとして「禁煙」にチャレンジすることを提案いたします。
 たばこの有害性についてはすでに確定していて異論のないところですが、未だに日本人男性の半数近くが喫煙しています。私が不思議に思うのは、放射能に対して非常に敏感になって反応しているのに、平気でタバコを吸っている人が案外多くいることです。福島市の放射線レベルで将来どのような影響が出るかはまだはっきりしませんが、タバコに含まれるニコチンを始めとする有害物質は近々確実に健康に影響が出ることは明らかです。
 ニコチンのみならず、たばこの煙に含まれている有害物質は健康に対してどのような作用があるか主なものを今一度復習してみましょう。
 (1)まず肺癌のリスクを飛躍的に高めることはもっとも有名です。(2)ニコチンは交感神経を刺激して血圧を上昇させます(高血圧の引き金ともなり、また悪化させる)。(3)悪玉コレステロールを増やし、血管の内皮を傷害することによって生活習慣病の根本的原因になる動脈硬化を促進します。
 ここで禁煙しようとしても、止められないのは自分の意志が弱いからだと諦めている人が多いのが実情ですが、その人たちを一方的に責めるわけにはいきません。何故なら、近年喫煙の本質は医学的に「ニコチン依存症」という一種の病的状態にあると受け止められるようになってきているからなのです。
 つまり、肺から吸収されたニコチンは脳に運ばれますと、脳組織にある「ニコチン受容体」という組織に取り込まれます。ここから脳内に送られた信号によりニコチンが入ってきたなと満足しますし、不足すると体にニコチンを補給するよう要求します。これが「ニコチン依存症」の本態です。
 最近この本態を断ち切るような薬が開発され、健康保険でも使えるようになりました。当診療所でもこの薬を処方するようになってから、禁煙成功率は70%を超える成績を挙げています。失敗した人はせっかく成功したように見えても、周りの誘惑に負けてつい一口だけと吸ってしまった人が多いようです。このように禁煙を成功させるには、家族、職場、友人、地域の協力が大切なことは言うまでもありません。