福島県の若年者に甲状腺検診はなぜ必要か(その1)
2012年3月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 福島県では、昨年10月から県民健康調査の一環として、18歳以下の子供たちに甲状腺超音波検診が行われています。すでに飯館村、葛尾村、川俣町山木屋地区などの児童や生徒、幼児たちの検診が終わり、順次全県の子供たちに検診が行われる予定です。
 ではなぜ子供たちに甲状腺検診が必要なのでしょうか。もう皆さんはすでに御承知と思いますが、旧ソ連チェルノブイリでの原発事故以後4,5年たってから地元の子供たちに甲状腺癌が急激に増加したことがマスコミに大きく報道され、注目されていました。これは他人事のように思われていたところに、今回の福島原発事故が発生したのですから、福島県のお母さん方の不安が一挙に高かまったのは当然のことでしょう。
 ヨード(ヨウ素)は甲状腺ホルモンの原料として大切な元素です。子供は特に甲状腺の活動が活発に働いており、大人よりヨードの代謝に敏感です。ここに放射能を帯びたヨードが体に入って甲状腺に取り込まれれば、大人の甲状腺細胞より子供の細胞の方が障害され易いため、子供は甲状腺癌になる確率が高いという訳です。ここに子供の甲状腺を検診する意義があります。
 ここで注目しておきたいことがあります。それはチェルノブイリと日本におけるヨードの摂取量が全く異なるという事実です。日本ではヨードを多く含む海藻類を日常的に摂り、ヨード不足は全く考えられないのに対し、チェルノブイリのような大陸内陸部では慢性的なヨード不足の状態にあります。ここで放射線ヨードが特に多く飛散したとされるチェルノブイリ原発事故では、政府の情報隠しのため、現地の子供たちは放射性ヨード含む食物やミルクを知らず知らずに無制限に摂取しました。ヨード不足にある子供たちの甲状腺は待ってましたとばかりに取り込みに励んだと考えられます。
 日本の場合、福島県の子供たちの甲状腺がどの位放射性ヨードを取り込んだかは今となっては全く分りませんし、信頼できる調査もされていません。半減期の短い放射線ヨードは2,3ヶ月で検出不能となるからです。ですから、これから4,5年たって子供の甲状腺癌が増加するかどうかは正直いって全く分からないと言わざるを得ません。
 ただここで断言できることは、甲状腺の放射線障害は今すぐに現れるものではないということです。例え今回の検診で異常所見が発見されたとしても、原発事故のせいではないといえます。
 一般に検診というものは、自覚症状がないにもかかわらず、やれば必ず一定の割合で異常所見が見つかります。今回の甲状腺検診も同じです。たとえ自分の子供に異常所見が見られたとしても、お母さんは疑心暗鬼になって心配することはありません。(この項4月号に続く)

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