たかが腰痛 されど腰痛
2013年8月
福島県農協会館診療所
所長 伊勢 重男

福島県農協会館診療所 所長 伊勢 重男
 厚生労働省の国民生活基礎調査によりますと、病気やけがで自覚症状を訴える人は30%を占めたそうです。そのうち65歳以上に限って言うと、男女とも何らかの訴えのある人の50%が腰痛、膝痛だったと言います。
 日常生活において腰が痛い、肩が張るなどの症状はよくあることで、マッサージ、整体などで何とかしのいでいる人も多いと思います。というのは、高齢者が増えるにつれて、このような訴えを持つ人が増加したため、整形外科などに掛かりたいと思っても、病医院は患者が溢れて待ち時間が長くなり、通院するのもつい億劫になるという話をよく聞きます。
 腰痛、膝痛は痛みが一時的なこともあり、自然に軽くなることも少なくありません。ここで注意して頂きたいのは、その中に放置しておくと生命を脅かす病気が潜んでいる場合があることです。確かに腰痛などの患者数は膨大ですから、そのような重大な病気になる確率は低いかも知れません。しかし見逃された時は大変なことになります。私の周りでもそのような例がいくつかありました。
 その例の一つを紹介します。その方は中年の男性で、日頃背中から腰にかけて鈍痛がありましたが、忙しい合間を縫って病院を受診するのがおっくうなので、はじめから近所の施療院で施術を受け、どうにかしのいでいたそうです。ところが一向に治まらないので,ついに整形外科を受診する決心をしました。そこでの検査の結果、痛みの原因は「脊椎への癌の転移」と判明しました。その時は残念ながら最良の治療を受ける時期を逸した結果となってしましました。
 一般の腰痛症は、背骨(脊椎)、腰骨(腰椎)や、それを支持する周囲組織に異常があって痛むわけですが、それ以外に原因があって「腰が痛い」「背中が痛い」という場合があるのがこわいのです。このような病気としては
○腹部大動脈瘤または大動脈解離(体で一番太い動脈が避けたり、瘤が出来る)○尿管結石○卵巣のう腫○すい臓がん○腰脊椎への肝転移など10種類以上の疾患が挙げられます。さらに精神科的な病気が原因で腰に来ることもあります。高齢者では、軽い尻もちが原因となって知らないうちに腰椎がつぶれていた(腰椎圧迫骨折)という場合も少なくありません。
 このように腰痛の原因は単純ではありませんから、最初にしっかりとした診断と治療の手順を踏むことが大切です。腰や背中が痛いときにまず最初にやることは、整形外科の診察を受け、腰脊椎以外の病気でないことを明らかにしてもらうことです。以上「医者のかかり方も寿命のうち」の一例でした。

健康アドバイス

 

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