薬草・生薬・漢方薬の話
2015年4月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 5月5日の「端午の節句」は「菖蒲(しょうぶ)の節句」とも言われ、昔は強い香気で厄を祓う菖蒲や蓬(よもぎ)を軒につるし、菖蒲湯に入って無病息災を願いました。いまでは「こどもの日」として、男女を問わず子供の健やかな成長することを願う日なっています。ところで、遥か昔、611年の5月5日に推古天皇が兎田野(奈良県)で、「鹿の角」と「薬草」を採取したそうです。その後、毎年5月5日の薬狩りは恒例行事となり、この日を「薬日(くすりび)」と呼ぶようになりました(日本書紀)。自然界に病気や怪我に効く成分を含んでいる植物(薬用植物=薬草)が存在することは、紀元前3000年(古代エジプト時代)から知られていました。薬草から不要な成分を除き、砕いたり煎じたりして長期保存ができるように加工したものを「生薬」と言います。生薬には、植物由来のもの以外に動物由来のものもあります。生薬の成分のうちいくつかのものはその化学構造が解明されて麻酔薬(コカイン)、咳止め(コデイン)、鎮痛薬(モルヒネ)、強心薬(ジゴキシン)、マラリヤ治療薬(キニーネ)などの医薬品として現在も利用されています。世界最古の本草書(薬用植物や生薬をまとめた本)は中国で後漢時代に書かれたそうです。予めいくつかの生薬を組み合わせて調合したものが「漢方薬」です。漢方薬は東洋医学の理論に基づいて処方されるものであり、学問的体系によらず経験的に民間伝承によって作られる民間薬とは異なりますのでご注意ください。漢方薬は自然の材料から調合されますが、100%安全かと言うと、そうではありません。漢方薬には副作用という概念はないのですが、誤治(診断ミスおよび投薬ミス)という言い方があって、間違った使い方をすると薬が効かないあるいは症状が悪化します。漢方薬の主成分である甘草による高血圧、小柴胡湯による間質性肺炎や、漢方薬によるアレルギーも報告されていますので、自己判断や他人に勧められるまま漢方薬を服用してはいけません。近年は大学(医学部)にも漢方医学講座が開設されるようになりました。日本東洋医学会が認定した漢方専門医が2,000名以上います。疑問があったら漢方の知識を持った医師に相談してください。

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