以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

高尿酸血症と痛風について
2016年1月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 ≪急に足の親指のつけ根が痛くなって腫上がり、風が吹いても痛い。≫
 「痛風」という病名の由来です。血液中には尿酸という物質が溶けていますが、その濃度が上昇しすぎると尿酸の結晶ができて関節内に沈着し、炎症を起こします。痛風の急性関節炎は痛風発作と呼ばれ、足の親指(第一足趾関節)に最も多く見られますが、足関節・足の甲・アキレス腱のつけ根・膝関節・手関節などに起こることもあります。痛風発作は一週間ほどで軽快することが多いのですが、原因となる高尿酸血症を放置すると痛風発作を繰り返すようになり、やがて関節の変形や痛風結節を伴う慢性関節炎に移行します。腎臓に尿酸が沈着すると腎臓の働きが低下し、尿毒症に陥ることもあります。痛風は、昭和30年頃まではまれな病気でしたが、食生活や生活環境の変化に伴い患者数は徐々に増加し、いまでは推定約60万人が通院・治療しています。また、痛風の原因となる高尿酸血症を有する人は、1960年代にはわずか5%に過ぎませんでしたが、1990年代にと約20%とほぼ4倍に増加しました。急性関節炎を起こす原因としては、関節リウマチ・偽痛風・捻挫・外反母趾などがありますが、高尿酸血症の人が急性関節炎を発症した場合は痛風発作が最も考えられます。痛風発作が起こったときは、湿布や消炎鎮痛薬の投与で様子をみます。発作中に尿酸を下げる薬を飲むと症状が悪化することがあるので、高尿酸血症の治療は痛みがなくなってから開始します。高尿酸血症の治療薬には、体内での尿酸の産生を抑制するものと、腎臓に作用して尿酸排泄を促進するものとがあります。治療開始後の尿酸値を4.6〜6.6mg/dlの範囲にコントロールしたときが最も発作が起こりにくいそうです。尿酸値が7.0mg/dl以上になると高尿酸血症と診断されます。また、8.0mg/dl以上が続くと痛風関節炎、尿路結石の発症率が高くなります。痛風は高血圧・脂質異常症・糖尿病などとも関連しているので、たとえ無症状であってそのまま放置するのは良くありません。プリン体を多く含む食物(魚の干物、レバー、白子など)を控え、肥満の是正し、節酒と適度な運動に心がけ、それでも改善しなければ医師と相談して薬を飲みましょう。