「インフルエンザ」雑感
2017年1月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一

 今年もインフルエンザの季節になりました。すでに予防接種をした方もいると思います。インフルエンザにはA型とB型とC型があります。C型インフルエンザは通年性で子供のうちに感染することが多いのですが、症状も軽く感染力も弱いのが特徴です。一度感染すると一生免疫をもち続けると言われており、大流行して問題になることはありません。一方、毎年12月から3月頃に流行するインフルエンザは「季節性インフルエンザ」と呼ばれています。「季節性インフルエンザ」のウイルスにA型とB型があるのはご承知のとおりです。A型インフルエンザウイルス粒子の表面には2種類の蛋白質の突起が存在します(図)。一つは感染しようとする細胞に結合してウイルスを細胞の中に取り込むために働くHA(ヘマグルチニン)で、もう一つは感染した細胞とHAの結合を切って細胞の中で増殖したウイルスを細胞から放出させる役割を担うNA(ノイラミニダーゼ)です。HAは16種類、NAは9種類あり、その組み合わせによってウイルスの型が決まります。インフルエンザウイルスはRNAという遺伝子なのですが、細胞の中で増殖する際に一部が間違って複製されることがあります(変異)。HAとNAが同じでも、変異をして少し違った構造になったウイルスを亜型と言います。A型のインフルエンザは変異しやすいので、多くの亜型が存在します。A型ウイルスの種類はきわめて多いのですが、ヒトに感染して流行するA型インフルエンザウイルスはH1N1亜型(Aソ連型、平成21年に流行したものと同じ亜型)とH3N2亜型(香港型と同じ亜型)です。これまでに144種類のA型インフルエンザウイルスが確認されています。さて、A型と異なり、B型インフルエンザウイルス粒子の表面にはHAとNAがそれぞれ1種類しかなく、変異もしにくいことが知られています。さて、A型インフルエンザウイルスは少しずつ変異を繰り返して毎年小規模の流行を繰り返しているのですが、まれに大きく変異することがあります。大きく変異したウイルスは免疫力のない人々に次々に感染し、あっという間に世界中に蔓延することになります。このように、新しく出現した感染力の強いA型インフルエンザウイルスを「新型インフルエンザ」と呼びます。一方、B型インフルエンザウイルスは変異しにくいので免疫力は弱まった頃、数年毎に流行します。話は変わりますが、ときどき話題になる「鳥インフルエンザ」とはトリとトリの間で感染するインフルエンザの総称です。鳥インフルエンザウイルスはA型ですが、主なものはH5N1亜型、H7N9亜型、H9N2亜型があってヒトのインフルエンザウイルスとは種類が異なり、ヒトからヒトに感染する力は持っていません。インフルエンザウイルスに感染した鳥と濃厚に接触する(養鶏場や生鳥市場で1〜2m以内で鳥に近づく)と感染することが稀にあります。WHOの報告では、これまでにH5N1亜型鳥インフルエンザウイスルに感染したヒトは856人(死亡者は452人)で、発症地域は中国、東南アジア、中東、アフリカおよび北米です。鳥インフルエンザ発生のニュースを聞くと驚いて不安になる方もいると思いますが日本では感染者は出ていません。鳥インフルエンザウイルスがヒトからヒトへ感染することはきわめて稀なので、あまり心配する必要はありません。もちろん、鳥インフルエンザウイルスが変異してヒトからヒトへの感染能力を獲得すれば新型インフルエンザとなって大流行する可能性はあるので注意は必要です。野鳥や野生の動物にはむやみに近づかないようにしましょう。


厚労省資料:田村大輔「平成28年度新型インフルエンザの診療と対策に関する研修」より

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