以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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Dr.メッセージ

花粉症の季節
2017年3月
福島県農協会館診療所・所長
重富秀一

 スギ花粉が飛散する季節になりました。花粉の飛散量は前年夏の気温が高く、日照時間と降雨量が多いほど増えるといわれています。花粉前線は南から北に日を追って移動します。今年は、2月下旬から3月上旬にかけて花粉前線が東北地方に到達すると予想されており、飛散のピークは3月下旬と推定されています。飛散する花粉の量が比例して症状(くしゃみ、鼻水、鼻づまりなど)が悪化する傾向がありますので、晴れた風の強い日に外出するときにはマスクや眼鏡を身につけてなるべく花粉と接触しないようにしましょう。また、衣服に付着した花粉が室内に持ち込まないようにする配慮も必要です。


 今年のスギ花粉飛散量は北海道から関東甲信越までは少ないそうですが、東海から九州地方では花粉の飛散量が昨年に比べて非常に多い(1.5倍から3倍)と予測されていますので、南の方に旅行される方はご注意ください。


 さて、花粉症の有病率は約30%だそうです。これまでに約60種類の花粉症が報告されていますが、その大部分(約70%)はスギ花粉症といわれています。花粉はヒトにとっては異物です。異物(=抗原)が体内に入るとそれを認識した細胞からリンパ球に情報が伝えられ、リンパ球からIgE抗体が産生されます。IgE抗体は鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面に集まり、異物の侵入に備えます。再び異物(=花粉)が肥満細胞表面のIgEと結合すると、肥満細胞からヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が放出されます。これらの物質によって鼻や眼の粘膜を刺激され、お馴染みのアレルギー症状を引き起こすことになります。花粉症の診断には鼻汁好酸菌検査や血清総IgE検査、皮膚テストなどが行なわれます。去年までなんともなかった人が突然花粉症になると、風邪と間違えることもありますので気をつけましょう。花粉症は早めの治療が有効ですので、「花粉症かな?」と思ったら医療機関を受診しましょう。治療は対症療法が主体です。薬剤としては、第二世代抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、化学伝達物質遊離抑制薬などの内服薬や点鼻薬および点眼薬、そして鼻噴霧用ステロイド薬と点眼ステロイド薬が使用されます。女性の場合は妊娠しているかどうかが問題になります。妊娠中はアレルギー症状が悪くなることもありますが、妊娠2〜4ヶ月の時期は胎児器官(中枢神経、心臓、消化器など)形成される時期なので、4ヶ月の半ばまでは内服薬を服用するのは避け、温熱療養や入浴、マスクの着用などで様子をみるのが一般的です。妊娠5ヶ月を過ぎると胎児奇形の心配はほとんどなくなりますが、胎盤を通り抜ける薬は胎児の発育に影響を与える可能性があるので、どうしても必要な場合は鼻噴霧用薬剤などの局所用剤を最少量使用します。花粉症は年齢や性別に関係なく発症します。花粉の季節は嫌でも毎年必ずやってきますので、花粉情報を参考にしてこの時期を乗り切りましょう。あまり症状がひどい時は我慢しないで専門医の診察を受けてください。