食塩と高血圧
2018年5月
福島県農協会館診療所(所長)
重富 秀一
 血圧とは血液が血管を押す圧力のことで、心臓が最も収縮したときに血圧は最高値を示し、最も拡張したときに最小値を示します(図1)。血圧の正常値は診察室の測定値で140/90mmHg未満、家庭では135/85mmHg未満と定義されていますが、血圧は常に変動しているので、高血圧(慢性的に血圧が高い状態にある)かどうかを診断するに血圧を繰り返し測定する必要があります(図2)。心臓が収縮すると心臓内の血液が一気に血管に送り出され、血圧は上昇します(収縮期活圧)。心臓が拡張すると血圧は低下しますが、心臓の出口には逆流を防ぐ弁があるので、ある程度の値までしか下がりません(拡張期血圧)。血液が血管の中を流れ続けることができるのはこのような理由によります。血圧は心臓が一回に押し出す血液の量、抵抗血管と呼ばれる細い動脈の抵抗、血管内を循環している血液の量、血液の粘性、大動脈の弾性などさまざまな要因の影響を受けて変化します。本題に入ります。私たちの体内にはナトリウムを含む液体(体液)が満ち溢れていて細胞の活動を支えています、体液は生命に直結する大切な働きをしていますので、その重要な成分であるナトリウムを摂取しなければ生命を維持することはできません。私たちが必要とするナトリウムの必要量は、食塩に換算して1日3g程度ですので、10gも20gも摂取する必要はありません。食物の中にはナトリウムが含まれていますので、食塩をほとんど添加しなくとも、普通に食事をしていれば食塩が欠乏する心配はありません。さて、食塩を摂りすぎると高血圧になると言うのは本当でしょうか。正解は「正しくもあり、間違いでもある」です。1960年代に塩分の摂取量が多ければ多いほど高血圧になる割合が大きくなるという疫学研究が発表されました。食塩摂取量が1日30g近くあった日本の北部では高血圧の有病率は非常に高く、食塩の摂取量は極めて少ないアラスカのエスキモー(イヌイット)の人たちには高血圧はほとんどありませんでした(図3)。それから現在にまで、食塩を取りすぎると高血圧になるという考えが広まりました。食塩を制限した食事をすると血圧が下がるという報告もたくさんありますので、塩分制限が悪いことではないのですが、塩分を制限して血圧が下がる人の割合は40%程度であり、高血圧に食塩が密接に関係しているのは高血圧全体の約20%と言われています(図4)。食塩に感受性がある人にとって塩分制限はとてもたいせつですが、自分が塩分に敏感な体質かどうかを調べるのは容易ではありません。また、加齢に伴って腎臓の働きが低下することも知られており、腎臓の働きが低下すると塩分を排泄する能力が弱まることもわかっています。また、塩分の摂り過ぎは腎結石や骨粗鬆症、胃がんなどの病気にも関係するとも言われていますので、若いうちから塩分制限に心がけるのは良いことです。食塩制限は高血圧の予防と治療だけでなく、さまざまな病気になる確率を減らす可能性があります。市販されている多くの食品にはナトリウム(Na)または食塩の含有量が記載されています。日本高血圧学会では、1日の食塩摂取量を6g以下にするように推奨していますので、いまからでも遅くはありません、塩分を摂り過ぎないような食生活を心がけましょう。



図1 収縮期血圧と拡張期血圧


図2 正常な人の1日血圧変動


図3 食塩摂取量と高血圧の有病率の関係


図4 食塩感受性高血圧の頻度

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