農家の皆様へ

「ストレスマネジメントについて」
2011年1月21日放送
白河厚生総合病院
精神保健福祉士 円谷義盛

 本日は、「ストレスマネジメント」というテーマで、ストレスとはなにか?そしてストレスを避けるのではなく、いかにそういう状況を自分でコントロールしてストレスを軽減して、上手につきあっていくか、ということについてお話しをさせていただきます。

 ストレスという専門用語を最初に用いたのは、ハンス・セリエという生理学者です。彼は、ストレスを「体外から加えられた刺激で生じるゆがみ」のことを意味しました。ストレスを引き起こす原因となるモノの事をストレッサーと呼びます。たとえば、ボールを指で押すとへこみますが、このへこみがストレス状態であり、へこみを起こす力がストレッサーということになります。へこんだボールは時間がたてば元に戻るように、わたしたちもストレスを受けて体調を崩しても、休めばたいてい健康な状態に回復します。これは、「ホメオスタシス」という、正常な状態に戻ろうとする体のおかげです。ところが、圧迫が強すぎたり、長すぎたりするとボールは元にもどらなくなってしまいます。わたしたちの体も同じように、ストレスが強すぎたり、長くさらされていると、ホメオスタシスが働かなくなってしまうため、ストレスの影響が強くならないようにコントロールする必要があるのです。

 わたしたちは、生きている以上、常に何らかのストレスを受けています。ストレスが過剰だったり、長期間にわたったり、複合的であったりすると精神的や肉体的に変調を来たす場合があります。ストレスの種類は、「暑さ、寒さ」、「飢餓感・動物に襲われる」といった原始的なものから、「会社、学校などでの社会生活での緊張感や対人関係不安といった精神的なものです。また、生理学者であるホームズとレイは、人生に起こるさまざまな出来事とストレス過程との関係について研究し、病気になる前に患者が人生における大きな変化であるストレッサーを経験していることを明らかにしました。この人生における大きな変化をライフイベントと名づけました。短期間に多くのライフイベントを経験すると、使用できるエネルギーの限界を超え、病気になる危険率が高くなると考えました。ストレッサーの強度が高い項目として上位から、配偶者の死、離婚、配偶者との別居、肉親の死、けがや病気、失業などとなり、100項目に点数をつけ、それぞれに指数を設定しました。

 ストレスを受けると脳が自動的に反応して、視床下部、脳下垂体、副腎皮質が自律神経やホルモンを調整して心や体を守ります。怒りや危険のストレスを感じると、この防御機構により体が戦闘体制状態になります。人間の体はどちらかというと原始的なストレスに対応していて、現代社会の精神的なストレスには向いていない反応なので、長期間や過剰なストレスにはこの防御機構はマイナスに作用することがあり、このような場合に精神的や身体的に変調をきたすことがあります。精神的にはうつ病、自律神経失調症などが、身体的には偏頭痛、肩こり、腰痛、高血圧、消化器疾患、心臓病などが挙げられます。心身症というものは、そのなかでも特にストレスが直接的な原因となっているものです。

 ストレスは有害なものとして考えられるかもしれませんが、ストレスがいつも有害であるかといいますと、そうではありません。本来、完全なストレスフリーという状態はあり得ません。そういうことになると人間は退化してしまいます。私たちの適応能力にふさわしいストレスは、むしろ生活に張りを与え、生きがいを感じさせます。人には、ストレスフルで困難な局面を乗り越えて成長していく能力が生まれつき備わっているからです。反面、私たちの適応能力をはるかに超えるストレスは過度の緊張状態に陥らせ、ついには心身ともに疲弊させてしまうことになります。ですからストレスが有害であるか否かは、ストレスの程度と個人の適応能力との相関関係で決まるものなのです。

 ストレスは生きていく限り生じるものです。したがって私たちに必要なのは、自分のストレスについてよく知り、適切な対処法を実践することで、ストレスと上手につきあっていくことなのです。すなわち、ストレスマネジメントが重要となってきます。

 ストレスの対処法にはさまざまな方法があります。たとえば、ストレッチ、マッサージ、趣味、気分転換、休息、瞑想などが挙げられますが、ここでは神経生理学者ジェイコブソンによって創案された「斬新的リラクセーション」がもとになっている筋弛緩法を紹介いたします。自律神経系の働きによって起きた緊張は、意識的にとろうとしてもなかなかとれるものではありませんが、この方法は意識的に緊張をとる方法として工夫されているものです。筋弛緩法を簡単に説明しますと、身体の各部位の筋肉を順番に数秒間緊張させ、つぎにそれを一挙に脱力させることにより、心身の緊張が意識的な脱力につられて緩んでくることを目的とされています。

 それでは、実践に移っていきましょう。できれば音がない、光が入らない場所で行うことが望ましいです。椅子に深く座り、眼を閉じ、全身の力を抜いて楽な姿勢をとってください。各身体部位に力を入れる大きさは70~80パーセントを目安とし、時間は6~7秒としてください。その後一気に脱力させます、リラックスさせる時間は約10秒としてください。各部位において2回ずつ行います。まずは手からはじめます。両手でこぶしを硬く握り、一気に力を抜き、指をだらりとさせます。この要領で順々に各部位に移っていきます。次は、両肘を強く曲げ、その後両肘を伸ばしてゆったりします。次は額です。額にしわを寄せ、眉をひそめます。その後しわを伸ばしていきます。次は眼です。眼を硬くつぶり、その後眼のまわりをゆったりとさせます。次は顎です。歯をくいしばって、その後歯を緩めます。次は首です。首を後ろに曲げます、その後楽な位置に戻します。次は肩です。両肩をすくめて、上げます、その後下ろします。次は胸です。深く息を吸って止めます、その後胸板を緩めます。次はおなかです。腹筋を硬くします、その後腹筋を緩めます。次は足です。両足のつま先を遠く下の方向に押します、その後元の位置に戻します。そして最後に深呼吸を繰り返し、体全体をリラックスさせます。復習として、力を入れる部位の順番を再度示します。(1)手、(2)腕、(3)額、(4)眼、(5)顎、(6)首、(7)肩、(8)胸、(9)おなか、(10)足、(11)深呼吸の順番となります。筋弛緩法のコツは、力を入れている時のその部位の感覚と、力を抜いて休めている時の部位の感覚の違いを味わうようにすることです。毎日続けていくことが大切であり、日常生活のなかで自動的に緊張が出たときに、それに気づき、とることができるようになります。なお、力が入っているときには血管を急激に収縮させるので、障害のある方や高血圧、心臓疾患のある方は避けるようにしてください。

 ストレス反応は、心理的、生理的な過度な緊張によって生じますが、性格、体質、生活習慣、考え方、行動パターンなどに応じて、実際に生じる具体的ストレス反応は人それぞれです。大事なのは、自分にはどのようなストレス反応が生じやすいか、という自分のパターンを把握しておくことです。できるだけ具体的にきめ細かく把握することで、自分のストレスの全体像がわかり、物事の考え方、思考の修正や行動の修正により、ストレスと上手につきあっていくことができるでしょう。

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