震災後の健康管理 〜心臓病の予防〜
2011年4月1日
白河厚生総合病院
院長 前原 和平

 この度の東北太平洋沖大地震で被災された方々、また原発事故で避難されている方々に心よりお見舞い申し上げます。
 大地震はマグニチュード9.0という巨大地震でしたが、その後もマグニチュード5以上の余震が300回以上もあり、不安な日々が続いております。精神的、肉体的ストレスで体調を崩されている方も少なくありません。
 この度の地震では津波によって多くの方が犠牲になりましたが、津波が関わらなかった1994年のロサンゼルス大地震や1995年の阪神淡路大震災などの経験から次のようなことがわかっています。ロサンゼルス大地震では意外なことに外傷で亡くなった方を含めて外因死は3割に過ぎず、7割の方が病気で亡くなっているのです。病気で亡くなった方の中では心臓病による死亡が突出しています。急性心筋梗塞による死亡と重症な不整脈による心臓突然死がロサンゼルスでは77%、阪神淡路では66%と大きな比重を占めているのです。大地震や戦争では極端な精神的、身体的ストレスに曝されますが、ロサンゼルス大地震や湾岸戦争では急性心筋梗塞の発病率が2倍に上昇し、発病率の上昇は数週から2~3ヶ月続いたと報告されています。
 急性心筋梗塞の症状は胸の痛みですが、とても特徴的なものです。患者さんは胸骨を中心とした前胸部全体を手の平を広げて示します。このことは痛みの範囲が手の平より広いこと、また痛みの境界が明らかでないことを意味します。痛みの性質は、しめ付けられる(絞扼感)、重い物をのせられる(圧迫感)と表現される鈍痛であり、「きりきり」とか「ずきずき」という局所的な鋭い痛みにはなりません。このような痛みが水を飲んだり、体位を変換することによって変化せず、30分以上も続いて冷や汗をともなうようであれば急性心筋梗塞が強く疑われます。救急車で直ちに病院に向かって下さい。
 それでは、ストレスと心筋梗塞にどのような関係があるのでしょうか。消化、呼吸、循環などを、意思とは無関係に調節して生命を維持している神経を自律神経と呼びます。自律神経は反対の作用を有する交感神経と副交感神経に分けられますが、ストレスは交感神経を刺激します。交感神経は動脈を収縮して血圧を上げ、脈拍や心臓の収縮力を増す言わば戦闘体勢を作るの神経なのです。血圧が上昇すると、動脈の内壁に過度の圧力が加わって傷ができやすくなります。また、交感神経が緊張すると血液が固まりやすくなります。こうして、動脈の内壁の傷口で血液が固まり始め、血液の流れを遮断してしまう病気が心筋梗塞なのです。心筋梗塞では致命的な重症の不整脈が度々生じます。
 ストレスの多い環境下で最も重要なことは、血圧のコントロールです。血圧を下げる薬を飲んでいる方は薬を切らさないことが大切です。避難されている方でも巡回している医師や調剤薬局からお薬をもらうことができます。
 また、現在のような大きなストレスのある状況ではその人のストレスへの適応能力が心筋梗塞や脳卒中の発病に大きく影響することが知られています。それは、これから生ずるであろう様々な出来事をある程度予測し、辛いことも意味のあることと捉え、自分の力で何とか切り抜けられるだろうと信ずることです。つまり、いかなる困難な状況においても積極的で前向きな心の姿勢を持ち続けることが交感神経の緊張をやわらげ、心筋梗塞や脳卒中の予防につながることが知られているのです。辛く、困難な日々が続いておりますが、気持ちをしっかりと持って、明日が今日よりも良い日であることを祈りたいと思います。

健康アドバイス

 

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