以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

「認知症について」
2012年8月17日放送
JA高田厚生病院
心身医療科2病棟 長峯 由美子

 農家の皆様おはようございます。毎日、農作業お疲れ様です。暑い日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。高田厚生病院 看護科の長峯由美子です。本日は、高齢化に伴い認知症の方が増加している現状があるため、「認知症」についてお話します。

 認知症は、身近な脳の病気です。日本人の65才以上で認知症患者は、226万人で13人に1人が認知症と言われていて、85才以上では、4人に1人と言われています。
 「認知症」は、いったん正常に発達した知能に何らかの原因で記憶力や判断力などの障害が起き、日常生活がうまく行えなくなる病気です。

 「認知症」は、大きく3つに分類されます。最も多いのは、脳の神経細胞が減って脳が小さく縮むアルツハイマー型認知症で、記憶力・判断力・思考力まで低下してしまいます。一度発症してしまうと、現在のところ、元のように戻ることはありません。次に多いのが、脳の血管が詰まったり、破れたりして、脳の働きが悪くなる脳血管性認知症です。その他には、脳腫瘍やビタミン不足、水頭症、甲状腺疾患などの原因で起こる認知症があり、病気を治療すれば認知症も改善される場合もあります。

 次に認知症の症状についてお話します。年とともに物忘れがひどくなると「もしかして認知症では!」と心配になることがあります。老化による単なる物忘れと認知症は違います。体験の一部を忘れる・物忘れの自覚がある・性格の変化がない・自分のいる場所や時間が分かるといった単なる物忘れの症状に対して、認知症は、体験の全てを忘れる・物忘れの自覚がない・性格の変化がある・自分の居場所や時間が分からないという症状があらわれます。
 また、「何かおかしい」「ひょっとしたら」という印象はとても重要です。認知症を知らせるサインがあります。初期では、身なりを気にしなくなった・とても怒りっぽくなった・外出や人に会うことを面倒くさがるようになった・蛇口やガス栓の閉め忘れが目立つ・物の名前が出てこなくなったなどの症状があり、進行すると、同じことを何度も訪ねる・最近の出来事を忘れてしまう・今まで出来ていた家事や作業が出来なくなった・買い物などのお金の間違いが多くなった・普段慣れている場所で道に迷う・物がなくなったと騒ぐという症状が出てきます。
 認知症は、記憶障害が進行していく一方、感情やプライドは保たれているので本人は、周囲に対して不安を抱き、周りの対応次第では、焦燥感、怒りなどを感じやすくなります。
 認知症であっても適切なケアがあれば心身の力が引き出され、その人らしく生活できます。
 しかし、気になる症状が現れても、「きっと年のせいだ」「まさか認知症になるなんて・・」「病院に行くとプライドが傷つく」などと思って病院受診を躊躇している方も少なくありません。認知症は、早く発見して、治療やケアを受ければ、症状を軽減したり悪化をある程度防ぐことができます。
 認知症についての知識が不足しているために発見が遅れて症状が進行していたり誤った対応をとったために、本人だけでなく家族も苦しい思いをする場合もあります。
 正しく診断されることで、適切な治療が受けられる病気です。早い段階から適切なアドバイスをうけ、福祉サービスなどを活用することで、介護負担を減らすことも可能です。認知症の患者や家族を支える手だてを知っていれば、認知症の患者さんが穏やかに暮らしていけるまちづくりにつながっていくと思います。

 認知症にならないで、少しでも老化を遅らせて健康的な生活を送るためには、認知症を予防することが大切です。毎日の生活の中でできる予防法についてお話します。まず、脳を健康にするためにウォーキングや水泳などの有酸素運動を30分以上行う。食事は、塩分と動物性脂肪を抑えて野菜・果物・魚中心にバランスの良い食事を腹八分目とる。そして、生活習慣病の予防及び治療を行うことも大切です。また、脳を鍛えるために、身の回りのことは自分で行なう。ストレスを溜めずに趣味を持ち、人との交流を大切にして会話し大いに笑いましょう。日常生活の中でほんの些細な事柄に注意するだけで認知症の予防につながります。

 地域に密着し農家組合員や地域住民の方々の健康管理に努めている高田厚生病院では、地域で認知症の方が増加している現状を踏まえ、医師・看護師・作業療法士・臨床心理士など他職種が協力し4人の認知症ケア専門士が中心となり毎月1回、認知症家族教室を開催しています。目標としましては、(1)ご家族の介護力をあげる援助をする (2)ご家族の介護負担感を少しでも減らす (3)認知症についての知識を身につけることを掲げています。教室内では、家族の思いを受け止め、当事者の思いを理解し介護のヒントになるよう趣向を凝らして毎回プログラムを考えて活動しています。
 認知症家族会から見えてきたことは、(1)認知症の予防 (2)認知症の早期発見・早期治療 (3)認知症になっても住みやすい地域づくりが重要だということです。今後も認知症のサポート体制を確立するために地域の方々と協力していきたいと思います。

 本日は、認知症についてお話しました。今までとは違う症状や行動に気がついたらかかりつけ医や専門医、行政の窓口に相談しましょう。