福島県民の疾病構造
2013年10月18日放送
白河厚生総合病院長
前原和平

 皆さんおはようございます。白河厚生総合病院長の前原和平です。今朝は福島県民の疾病構造には大きな特徴があるという事と、その改善を図るためには私ども福島県民の生活習慣を大きく変える必要がある。ということをお話ししたいと思います。
 昨年発表されました平成22年死因別年齢調整死亡率によりますと、心筋梗塞による死亡が福島県は全国で男女とも第1位となってしまいました。心筋梗塞を専門領域とする私にとりましては大変な衝撃でした。
さらに調べてみますと、脳梗塞が女性1位、男性5位、大動脈瘤が女性2位、男性8位と動脈硬化性疾患による死亡が福島県では際立っています。一方、がんによる死亡は女性28位、男性18位と中間であり、福島県民ががんに比べて動脈硬化性疾患にかかりやすいことがわかりました。
 それでは福島県民の寿命はどうなのでしょう。もちろん日本人の寿命の延伸はみなさんご存知のとおりで、福島県民も同様に伸びてきたわけですが、都道府県別の比較をいたしますと福島県は女性38位、男性44位と最下位グループにあります。
 大東亜戦争以前は福島県民の寿命は結核をはじめとする感染症が少なかったことから、都道府県別最上位グループにありました。
 平成22年は大震災前のデータになりますが、この70年ほどの間に福島県民の寿命は延びてはきたものの、その延び方が他の都道府県に比べて低く、都道府県別の比較では最上位グループから最下位グループに転落したと言えます。
 平成22年の平均寿命は、長野県が男女とも第1位でした。いっぽう最下位は男女とも青森県でした。
 この両県のもっとも大きな違いはがんの死亡率でした。青森県第1位人口10万人当たり97.7人に対して、長野県が47位69.4人と最下位で、青森県は長野県に比して41%もがんの死亡が多くなっています。
動脈硬化性疾患とがんの多くは生活習慣によって大きく影響されます。病気の発症、あるいは悪化をさせる因子を危険因子と呼びますが、動脈硬化の三大危険因子は喫煙、高コレステロール血症、高血圧。がんの三大危険因子は喫煙、多量飲酒、肥満です。
 長野県と青森県の生活習慣を比べてみましょう。喫煙率は青森県1位。長野県44位。飲酒習慣・青森県1位、長野県19位。肥満率・青森県9位、長野県40位と生活習慣の違いががんの発症率と強く結びついている事が分かります。
 それでは福島県民の生活習慣はどうなのでしょう。福島県民は食塩摂取量が女性2位、男性3位と高いことが特徴です。食塩摂取量が多いと血圧を上げて動脈硬化を進めます。また、肥満率が高いことが福島県の特徴であり、女性2位、男性4位でした。また、喫煙率も高く、男性3位、女性16位です。このような福島県民の生活習慣が、動脈硬化性疾患の発症に大きく関与しているものと思われます。
 福島県にとって更に深刻なことは、原発事故の影響です。今お話しした内容は平成22年。つまり震災前のデータです。震災後は家に閉じこもりがちになり、生活習慣が更に悪化していることが推定されます。事実、平成24年4月の学校保健統計調査で福島県児童の肥満率が5歳から9歳で全国1位。10歳と11歳で2位と急増しており、避難生活や屋外活動の制限が長く続いたことによる運動不足やストレスが原因と考えられています。
 肥満率の増加は、県民健康管理調査によって成人でも明らかとなりました。したがって、放射線による健康障害よりは、生活習慣の悪化による動脈硬化性疾患を中心とする生活習慣病の増加が将来的にはるかに大きな問題になることが懸念されます。
 わたくし達福島県民は禁煙をすすめ、食塩摂取量を減らし、体重が増加しないように心がけましょう。そうして動脈硬化性疾患を減らしていくことが重要です。
 終わりに日本農村医学会の宣伝をさせていただきます。
 第62回日本農村医学会学術総会を、来る11月7日木曜日、8日金曜日の両日わたくしが学会長となり、福島市で開催いたします。およそ1,000人を超える学会員が全国から参加する予定です。
 大会のテーマは‘地域コミュニティの復興・再生と包括的地域医療’といたしました。
 全国で大規模災害の備えが検討されている中、最も大きな複合型大規模災害を経験し、更に現在も進行中である福島県に於いて、東日本大震災からこれまでを総括し、将来に向けた対応を考える機会になればと願っております。
 11月8日には、芥川賞作家、三春町福聚寺住職 玄侑宗久さんをお招きして公開講座を開きます。
 公開講座は11月8日金曜日、午後3時10分から4時10分まで福島グリーンパレスで「地蔵のこころ、日本人のちから」というお話をいただきます。
 ぜひ多くの方にご参加いただければ幸いです。

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