ロコモティブシンドロームと運動 |
2017年10月放送 高田厚生病院 リハビリテーション科 横谷 直俊 |
皆さん、おはようございます。 私は、会津美里町にあるJA福島厚生連・高田厚生病院リハビリテーション科の横谷直俊と申します。 さて、皆さんは新聞やテレビ等で「ロコモティブシンドローム」という言葉を聞いたことはありませんか? 「ロコモティブシンドローム」とは「運動器症候群」とも呼ばれ、『運動器の障害により歩行能力が低下し、要支援状態、あるいは要介護状態になる危険性がある状態』と定義されています。「運動器」とは、身体を動かす為の筋肉・骨・神経系の総称であり、人間は運動器による身体活動によって、毎日の生活を送っています。この日常生活に必要な「運動器」が加齢や病気などによって痛みだしたり、その働きが衰えてくると、身体が動きにくくなり運動不足になりがちになります。そして、その状態が続くと全身の運動機能が徐々に低下していくことが多く、やがて介護が必要となったり寝たきりになる危険性も高くなってしまいます。 この「ロコモティブシンドローム」の原因は①何らかの疾患を有した運動の障害 ②加齢による運動器機能不全の2つに分類されます。 ①の疾患とは変形性関節症、脊柱管狭窄症、骨粗鬆症に伴う円背などであり、これらの疾患により生じた関節可動域の制限、筋力の低下、バランス能力の低下、歩行能力の低下等がロコモティブシンドロームに繋がってしまいます。②は疾患を有していないのにも関わらず、加齢等による筋力の低下・持久力の低下・バランス感覚の低下・反応時間の遅れなどの運動機能の低下が原因となります。 日本整形外科学会ではこのような「ロコモティブシンドローム」のチェックとして次の7つの項目をあげています。 ①片足立ちで靴下が履けない。 ②家の中でつまずいたり滑ったりする。 ③階段を上がるのに手すりが必要である。 ④掃除機を使った掃除や、布団などの上げ下ろしなどの家事が困難である。 ⑤横断歩道を青信号で渡りきれない。 ⑥15分間続けて歩くことができない。 ⑦2㎏程度の買い物をして持ち帰るのが困難である。 以上の7つの項目のうち1つでも当てはまればロコモティブシンドロームの可能性がありますので注意が必要です。 このような「ロコモティブシンドローム」に陥らないためにも、運動機能の低下を予防していきましょう。「ロコモティブシンドローム」の予防の対策としては運動、特に下半身の筋肉を鍛えることが重要です。しかし、運動をするといっても、いきなりランニングやジョギングなどの激しい運動をするのは大変ですし、無理な運動を行い、身体を壊してしまっては本末転倒になってしまいます。まずはウォーキングから始めてみてはどうでしょうか?ウォーキングはトレーニングマシンの様な高い道具を用意して特別なことをすることも無く、運動靴があればすぐに始められますし、無理なく実施することができます。また、ウォーキングで外に出ることによって気分転換もでき、生活の活性化にも効果です。そしてウォーキングなどで下半身を鍛えることによって、膝関節の負担を軽減し、膝の痛みやつまづき・転倒の予防にもなります。もちろん、これから暑くなってくるのでウォーキングを行う時には水分補給は忘れずにしっかりと行って下さい。 また、運動は広い意味で捉えると、仕事や家事などの日常生活での身体活動も含まれます。仕事に行く時や買い物に行く時などの歩行を普段よりペースを上げて歩く。近くのコンビニなどに行くときは車ではなく歩いていく、外出の際に、エレベーターやエスカレーターの利用を控えて階段を利用する、家でも階段の昇り降りを意識的に行うといった日常生活のちょっとした工夫でも、継続することによって筋力も向上し「ロコモティブシンドローム」の予防に繋がります。また、常に「良い姿勢」を保つことも大切です。姿勢を良くするためには体の多くの筋肉を使用しているので良い姿勢を保つだけでも背中の筋肉などを鍛えることが出来ます。 「ロコモティブシンドローム」は高齢になったら表れるものではなく、若い頃からの生活習慣や環境によるものが多い様です。将来、介護が必要にならないためにも、元気なうちから生活習慣の見直しや適度な運動を心がけ、「ロコモティブシンドローム」の予防に努めていきましょう。 それでは皆様、今日も元気に明るく一日を過ごしましょう。 本日はありがとうございました。 |
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