高齢者の低栄養と食事
2018年12月放送
介護老人保健施設厚寿苑
管理栄養士 亀谷 ゆかり
 皆様、おはようございます。朝の寒さが厳しくなりましたがいかがお過ごしですか。私は南相馬市にある介護老人保健施設「厚寿苑」の管理栄養士亀谷と申します。今朝は「高齢者の低栄養と食事」についてお話します。
 皆様は低栄養という言葉、お聞きになったことはありますか。「体重が少しずつ減ってきたな」「体力が落ちてきたな」と感じる方は、疾病などの原因がありますが、実は「低栄養」が隠れている場合があります。低栄養とは、身体に必要な栄養素が足りていない状態を言います。栄養素は特に、エネルギーやタンパク質を指す場合が多いです。低栄養の状態が長く続くと、「体重が減る」「筋肉量や筋力が減る」「風邪などの感染症にかかりやすい」「キズが治りにくい」「下半身がむくみやすい」といった症状が出ます。
 厚生労働省の国民健康栄養調査(平成29年)によると、65歳以上の低栄養傾向の割合は、男性12.5%・女性19.6%でした。実に男性の8人に1人・女性の5人に1人が低栄養ということになります。また、この10年間でみると65歳以上の女性の低栄養は増加しています。高齢化が進む中、低栄養の高齢者はますます増えることが見込まれています。

 低栄養の原因は様々あるのですが、日常生活の場合、大きく2つが考えられます。1つは疾患です。高齢になると慢性的な疾患を持っている場合が多く、特に慢性閉塞性肺疾患(COPD)や心不全、がんなどは、炎症や代謝亢進でエネルギーを多く使います。すると、身体に必要なエネルギーや栄養素が不足し体重が減少します。もう1つは食事の量や質が低下することです。高齢者の場合、義歯を使うことや口腔周辺の筋肉や機能の低下で食べ物を噛みにくく・飲みこみにくくなります。味覚を感じる舌の味蕾細胞が減少し、味覚を感じにくく食欲が減りやすくなります。また、活動量が徐々に減ってお腹がすきにくいことで、食事量が少なくなりがちです。
 低栄養の状態が長く続くと、認知機能の低下・筋肉量や筋力が減る・体重が減るといった症状が出ます。筋肉量や筋力が低下すると、歩く・物を持つ・起き上がるなどの身体機能が低下し、転倒しやすく寝たきりや介護の必要な状態へ移る可能性が高くなります(サルコペニア)。体重が減り痩せている場合、生存率が低くなるといった調査結果もあります。つまり、低栄養は、いつまでも元気で健康に過ごすことを遠ざけてしまうのです。

 そこで、低栄養を防ぐための食事のポイントを4つご紹介します。
1.バランスの良い食事を心がけましょう
 主食・主菜・副菜を基本に食べ、食事を抜かすことは避けましょう。主食はごはんや麺・パンのことです。主菜は肉や魚、卵、大豆製品のおかず、副菜は野菜のおかずのことです。「ごはんに味噌汁としょっぱい漬物があれば十分だよ」という方もいらっしゃいますが、これでは主菜が抜けてしまうので焼き魚なども食べるようにしましょう。朝食を食べないなど食事を抜かして食べる習慣では、1日に取れる栄養量が不足してしまいます。朝少ししか食べなかったという場合は、間食でヨーグルトやチーズなどの乳製品を取ることもよいと思います。

2.肉や魚などを心がけて食べましょう
 食欲がないときは、肉や魚のおかずを先に食べるように心がけましょう。脂の多い食べ物はあまり食べないという方でも、脂の少ない部位の鶏ムネ肉や赤身の牛肉、鮭などを選ぶと食べやすくなります。これらの肉や魚には、分岐鎖アミノ酸が多く含まれています。分岐鎖アミノ酸は筋肉を作るたんぱく質合成を促進することができます。

3.油を上手に使いましょう
 油と言っても揚げ物や脂っこいものをオススメするわけではありません。煮物は先に油で炒めて炒り煮にしたり、野菜の和え物はマヨネーズを使ったりすることで、食べる量が少なくてもエネルギーを上げることができます。また、ゴマ油やバターを使うと、香りがよくなって食欲が増します。

4.水分を取りましょう
 トイレヘ行く回数を気にして、水分を控える高齢者の方は多く見受けられます。脱水は食欲の低下や気力の低下を招きます。喉が渇いていなくても意識して水分を取りましょう。目安は1日1.5L、2時間おきにコップ1杯を飲むくらいになります。また食事以外に、筋力を維持するために、散歩や庭作業など身体を動かすことを少し意識してみてください。

 最後に、「健康な食事」は、特定の栄養素や、健康にいいとの謳い文句で出回っている食品を推奨することではありません。大切なのは、毎日の食事です。
 食事に関するお困り事がございましたら、気軽に管理栄養士へご相談ください。皆様お聞きいただきありがとうございました。それでは、素敵な一日をお過ごしください。



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