以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

運動器不安定症について
2019年1月放送
鹿島厚生病院
リハビリテーション科 小豆畑 健

 皆さん、おはようございます。厳しい寒さの日が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか。私は、JA福島厚生連 鹿島厚生病院 リハビリテーション科の小豆畑 健と申します。
 本日は、運動器不安定症についてお話したいと思います。最近では、ロコモティブシンドロームやサルコペニア、フレイルといったあまり聞きなれない言葉がテレビや新聞、雑誌の情報などから目にしたり、耳にしたりすることもあるかもしれません。ロコモティブシンドロームやサルコペニア、フレイルは体に起こっている状態を指します。今回お話しする、運動器不安定症とは、診断によって定義される病名となります。
 みなさんに自分でその障害に気づいてもらえるよう、最近ではロコモ(運動器症候群)と呼ぶ新しい概念を提唱しているようです。ロコモは運動器の障害による要介護の状態および、要介護リスクの高い状態を言います。病名と状態の違いは、例えて言えば、風邪症候群が病名で発熱や鼻水、咳などは症状と考えれば、わかりやすいかと思います。
 さて、運動器不安定症とは、高齢者で、歩くことや移動能力の低下により転倒しやすかったり、あるいは閉じこもりとなり、日常生活での不自由を伴う疾患をいいます。当然病名なので、この診断には一定の基準があります。
 日本整形外科学会によれば、高齢化にともなって運動機能低下をきたす運動器疾患により、バランス能力 および移動歩行能力の低下が生じ、閉じこもり、転倒リスクが高まった状態。と定義されています。診断基準として、高齢化にともなって運動機能低下をきたす11の運動器疾患または状態の既往があるか、または罹患している者、さらに日常生活自立度ならびに運動機能が機能評価基準に該当する者といくつかの基準があります。

高齢化にともなって運動機能低下をきたす11の運動器疾患または状態として
 1.脊椎圧迫骨折および各種脊柱変型(亀背、高度腰椎後弯・側弯など)
 2.大腿骨頸部骨折を代表とする下肢骨折
 3.骨粗鬆症
 4.股関節、膝関節などの変形性関節症 
 5.腰部脊柱管狭窄症
 6.頚部脊髄症、脊髄損傷などの脊髄障害
 7.パーキンソン病、脊髄小脳変性症などを代表とする神経・筋疾患
 8.関節リウマチおよび各種関節炎
 9.下肢切断後
 10.長期臥床後の運動器廃用
 11.高頻度転倒者

さらに機能評価基準として二つの項目があります。
 1 日常生活自立度判定基準ランクJまたはAに相当
  日常生活自立度ランク
   Jとは  生活自立を表し  独力で外出できる程度のこと
   Aとは  準寝たきりを表し 介助なしには外出できない程度のこと
  どちらも外出を含む移動が可能以上の状態にあるということになります。

 2 運動機能として
  開眼片脚起立時間が15秒未満、又は3m timed up-and-go(TUG)テストが
  11秒以上に該当する場合です。

 開眼片脚起立時間とは、靴あるいは素足で滑らない配慮のもと、ある程度の固さのあるしっかりした床で行います。転ばないように注意しながら行います。両手を腰に当て、片脚を床から5cm程挙げ、立っていられる時間を測定します。最大60秒程度まで保持できれば十分と思われます。15秒未満の方は運動器不安定症に該当するかもしれません。
 3m timed up-and-go(TUG)テストは、椅子に座った姿勢から立ち上がり、3m先の目印点で折り返し、再び椅子に座るまでの時間を測定します。危険のない範囲でできるだけ速く歩くようにします。これも十分に転倒予防策が必要なテストとなります。11秒以上という方は、運動器不安定症に該当するかもしれません。
 まとめると高齢化に伴って、先に述べた変形性関節症、骨粗しょう症、骨折などの運動器疾患にかかっていて、開眼片脚起立時間が15秒未満または3m timed up-and-go(TUG)テストが11秒以上に該当する場合、運動器不安定症に該当する状態にあるといえると思われます。 当然、診断ですので医師の診察が必要となり、場合によっては改善や状態が悪くならないようにリハビリや運動習慣の継続が必要となると思われます。無理なく、できるだけ継続して日々行うことが望ましいとされています。そして、体を動かすためには適度な栄養と睡眠とのバランスも必要となります。新しい健康法を実践することも大切ですが、続けられるものでないと効果はそれほど期待できないと思います。効果を実感するためには、2週間以上継続する必要はあると思います。また、重症化を防ぐために、正しい診断とリハビリテーションなどの介入が大切です。運動器障害は徐々に気付かれないまま進行します。重ねて申し上げますが、日常生活の中で「無理なく、続けて」が一番であると思います。それでは、皆さん良い一日をお過ごし下さい。