以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

「コロナ感染症について」
2020年4月放送
白河厚生総合病院
薬剤科 小林 俊生

 白河厚生総合病院で薬剤師をしている小林と申します。よろしくお願いします。
 新型コロナが全世界で流行しているため、コロナ感染症について放送します。
 そもそも「コロナ」という名称の由来は、コロナウイルスを顕微鏡で見たときに大きな球状の表面突起があり、それが王冠や太陽の周りの光の輪のようにみえることをギリシャ語から「コロナ」といわれるため「コロナ」と命名されました。
 新型コロナウイルスがでる前は、ヒトに感染するコロナウイルスとして6種類あります。日常的にヒトに感染する風邪のウイルス4種類と、動物から感染する重症肺炎ウイルス(SARS)、(MERS)といった2種類が知られています。
 主な症状は鼻水、鼻づまり、咳、下痢で、感染経路はせき、くしゃみなどにより、約1mの範囲で人に感染させるといった飛沫感染と握手といった直接的な接触や、手すりやドアノブなどのよくさわる、手に触れるものを介した間接的な接触により、病原体が付着することで感染するといった接触感染です。
 小児や高齢者、何らかの持病をもった免疫力が低い方が重い病気になりやすいとされています。
 日常的にヒトに感染する4種類の風邪のコロナウイルスは、HCoV-229E、HCoV-OC43、HCoV-NL63、HCoV-HKU1という4つの型です。風邪の10~15%はこれら4種のコロナウイルスを原因とします。冬季に流行のピークが見られ、ほとんどの子供は6歳までに感染を経験します。多くの感染者は軽症ですが、高熱を引き起こすこともあります。危険な病原体ではないため入院措置といった必要はありません。
 2002年から2003年に流行した重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS)は、コウモリのコロナウイルスがヒトに感染して重症肺炎を引き起こすようになったと考えられており、詳細はいまもよくわかっていません。感染者の一人から十数人に感染を広げる感染力が見られました。病気の感染拡大を抑えるために、感染症法という法律に従って感染者には感染症指定医療機関への入院措置がとられ、陰圧管理された病室で治療を受けることになっています。
 2012年から現在(水面下でですが)中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS)は、ヒトコブラクダに風邪症状を引き起こすウイルスですが、種の壁を超えてヒトに感染すると重症肺炎を引き起こすと考えられており、こちらも詳細はよくわかっていません。MERSもSARSと同様に、感染症指定医療機関への入院措置がとられます。
 ここから今現在世界的に問題となっている新型コロナウイルスを2020年3月17日に厚生労働省から周知した新型コロナウイルス感染症診療の手引き・第1版をもとに説明します。
 2019年12月から中国・武漢市で発生した原因不明の肺炎は、新型コロナウイルスが原因であることが判明しました。SARSやMERSの病原体と同じ分類の動物由来コロナウイルスと判明しましたが、宿主動物は2020年2月時点ではまだ分かっていません。現在はヒトからヒト感染によって流行が広がっている状況です。
 こちらも飛沫感染、接触感染が主体と考えられ、換気の悪い環境では、咳やくしゃみなどがなくても感染もあり得るとされています。
 体内の潜伏期間は1~14日間であり、体内に入ってから5日程度で症状がでることが多いとされています。
 症状は、発熱、咳・のどのいたみ・はなみず・鼻づまりといった呼吸器症状、頭痛、だるさなどがみられます。
 下痢や嘔吐などはあまりみられません。インフルエンザや風邪症状と似ており、冬の時期に区別することはとても困難です。重い病気となってしまう方として小児、高齢者、持病もちといった免疫機能が低下している方が知られており、これまでにでている6種類のコロナウイルスと大きな差はありません。
疑い患者の要件として37.5℃以上の熱と咳・のどのいたみ・はなみず・鼻づまりといった呼吸器症状と病気になってから2週間以内に流行地域へ渡航歴があるもしくは流行地域に渡航した人や居住していた人と濃厚接触がある方が疑い患者となります。
 疑いの要件にあてはまるようであれば、クリニックや病院に行く前に、保健所へ相談し、保健所職員から指示をあおいでください。
 検査は、インフルエンザやコロナ感染症以外の風邪症状の検査をして陰性だった方がPCR検査を受ける流れとなります。
 治療薬は、現時点では、特異的な治療法はありません。現時点でわかっていることは、中国では臨床試験が行われているほか、日本国内でも臨床研究が開始される予定であるということです。
 予防法といたしまして、外出先から帰宅時と、調理をする前、食事前に手洗いうがいをしていただくこと、また、換気の悪い密閉空間、大人数が集まる密集場所、間近で会話や発声する密接場面を避けていただくようおねがいします。
 以上で終わります。ご清聴ありがとうございました。