以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

家庭で出来る感染対策について
2020年12月放送
鹿島厚生病院併設 介護老人保健施設厚寿苑
副看護師長 荒 可奈子

 皆さんおはようございます。私は鹿島厚生病院併設介護老人保健施設厚寿苑 看護師の荒可奈子です。今回は「家庭でできる感染対策について」お話させていただきます。

 私たちの周りには目に見えないウイルスや細菌がたくさん存在しています。「感染」とは病気となるウイルスや細菌が体の中に入って増えることにより、発熱や咳、下痢や嘔吐など、体に様々な影響が起きる状態の事を言います。
 冬に多発する感染症として、よく耳にするのが「インフルエンザ」や「ノロウイルス」です。現在は新型コロナウイルス感染症の流行が収まらず、連日、感染者の発生が聞かれています。
 「感染」は、どのように起こるのでしょうか。
 インフルエンザに感染した人が、くしゃみや咳をして、それと共に排出されたウイルスが鼻や口から入り感染する「飛沫感染」や、ウイルスや細菌に汚染されたものに触って感染する「接触感染」等があります。ノロウイルスはインフルエンザとは異なり、咳やくしゃみで感染することはありません。ノロウイルスは、感染者の吐物や便と共に排出されたウイルスが手等を介して感染します。
 インフルエンザに感染した場合、急激に発症し、発熱や筋肉痛、関節痛など全身症状が現れます。通常約1週間程度で良くなりますが、高齢者や幼児、喘息や慢性呼吸器疾患、慢性心疾患、糖尿病など持病がある人は重症化する危険性が高くなります。
 ノロウイルス感染症は、吐き気や嘔吐、下痢や発熱等の症状が突然始まることが特徴です。発症当日の症状が激しい事も特徴に上げられ、多くの場合は1日から2日で良くなりますが、便の中には通常1週間程度ウイルスが排出されるので、注意が必要です。ノロウイルスに効果のある薬剤はありませんので、早めに医療機関を受診することや、症状が落ち着いた時に少しずつ水分補給する等の対応が必要になります。
 ご家庭で感染を予防したり、感染の拡大を防ぐためにはどのようなことに気をつけていけば良いでしょうか。
 身近な感染対策で重要なことは手洗いをしっかり行い、家庭内にウイルスや細菌を持ち込まない事です。帰宅してすぐのタイミングで、しっかりと手や指を殺菌、消毒しましょう。手洗いは石けん液をしっかりと泡立てて洗い、流水で流します。清潔なハンカチやペーパータオルで水分を残さないように拭き取りましょう。汚れを落としたあとにアルコールによる手の消毒も有効です。二度洗いすることで、ウイルスの除去効果が高まるという調査結果もあります。トイレの後や、排泄物を処理したあと、食品を取り扱う前等、特に冬場のウイルス流行時期には二度洗いの実施をおすすめします。
 また、ノロウイルスは体の外に排出されても、しばらくは自然環境下で生き続けます。インフルエンザにはアルコール消毒が有効ですがノロウイルスはアルコール消毒や、乾燥などへの抵抗力も高いためなかなか死滅しません。排泄物の処理には次亜塩素酸ナトリウムが有効です。処理する場合には使い捨てエプロン、手袋、マスクを着用し、感染予防することが大変重要です。
 冬場は人の体も寒さのため体温が下がりウイルスや細菌へ抵抗する免疫力が落ちています。夏に比べて水分摂取量も少ないため、のどや気管支の粘膜が乾燥し、ウイルスや細菌に感染し易い状態になります。帰宅時のうがいはウイルスや細菌を除去することに効果的です。のどや空気が乾燥する冬場は頻繁にうがいをしましょう。
 また、基本的なことになりますが、人込みではマスクを着用することや、人込みを避ける事も重要です。寒い季節ではありますが、定期的に換気を行い、部屋の空気を入れ替えることも行っていきましょう。
 流行前にインフルエンザの予防接種を受ける事で、発症する可能性を減らし、発症したとしても重い症状になるのを防ぎます。65歳以上の高齢の方や基礎疾患のある方はインフルエンザワクチンの予防接種が推奨されています。ワクチンの抗体が体の中に作られるまで、1~2週間程度かかります。ワクチンの効果は約5カ月間続きますので、12月にはワクチン接種が終わるようにすることが望ましいでしょう。このような事に気を付けながら、日頃より、生活習慣を整え、十分な栄養と睡眠をとり、抵抗力を高めることを心がけておきましょう。
 日常生活で大切なことは、「感染をもらわない」「感染を人にうつさない」「感染を広げない」ということです。当施設でも、高齢の方々が集団生活をしているため、利用者の皆様が安心して療養生活を送れるよう、感染対策に努めております。
 日頃から行っている手洗いが重要な感染対策です。正しい知識をもち、一人ひとりが感染予防に心掛けて自分自身とご家族を感染症から守っていきましょう。
 お聞きいただきありがとうございました。