以下の記事は、福島県厚生農業協同組合連合会(JA福島厚生連)「健康アドバイス」として、過去に掲載された情報のバックナンバーです。
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農家の皆さんへ

新型コロナウイルス感染症の検査について
2021年1月放送
鹿島厚生病院
検査科 橋本 剛男

 ラジオをお聞きの皆様、おはようございます。
 鹿島厚生病院検査科の橋本と申します。
 今日は、全世界で流行してる新型コロナウイルス感染症の検査についてお話いたします。

 新型コロナウイルスの検査には、PCR検査、抗原検査、抗体検査があります。
 PCRとは、「Polymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)」の頭文字をとった略称です。そもそも遺伝子は核酸(デオキシリボ核酸はDNAと呼ばれ、リボ核酸はRNAと呼ばれています)と呼ばれる物質が鎖のような構造になっていて、「ポリメラーゼ」という酵素によって複製されます。通常、微量なウイルスだけではその遺伝子情報について十分な検査ができませんが、PCR検査ではポリメラーゼによって元の遺伝子を増やし、その遺伝子があるかどうかの検査を可能にします。
 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)におけるPCR検査では、新型コロナウイルス遺伝子を増やすことで、ウイルス遺伝子を検出します。新型コロナウイルスに限らず、遺伝子が判明すれば、その他さまざまな菌・ウイルスに対してもPCR検査を行うことができます。
 PCRの精度は、検査する時期によりますが鼻腔からの検体によるPCR検査の陽性割合が、発症日で94.39%、発症10日後では、67.15%、発症31日後では2.38%でした。咽頭からの検体では、発症日で88%、発症10日後で、47.11%、発症31日後では、1.05%と推定しています(Wikramaratna Pらの報告)。
 PCR検査は感度も精度も良い検査ですが、発症時期によって陽性率が異なります。あくまでも見ているものは「ウイルスの遺伝子」なので、ウイルスが壊れていて実際には感染力がなくても陽性になることがあります。ウイルス量が少ないとウイルスに感染していても陰性になります。いずれも100%とは言えないのですが、症状が出ているときにPCR検査で陽性になった場合は、体内にウイルスが存在することが推定されます。
 PCR検査は保健所を介した行政検査、医療機関からの検査会社での検査、医療機関においてもPCR検査キットとPCR機器があれば受けることが可能です。
 検査方法は、鼻の粘膜またはのどを綿棒で拭う方法と、唾液を採取する方法があります。取った検体を処理してPCR検査を行います。PCR検査の結果は数時間でわかりますが、検査する場所によっては検体を運搬する必要もあるため、結果がわかるまでに数日かかることもあります。
 抗原検査は、ウイルス粒子のある成分で、そのウイルス特有の構造(抗原)を検出する検査です。抗原に対して反応する抗体蛋白質を使い、抗原抗体反応を目に見えるようにするものとお考えください。
 抗原検査の精度は、抗原検査キットによりますが、PCR検査との比較で、ウイルスが400個以上で93%、100個以上83%、30個で50%と言われています。したがって、ウイルス量が少ない時期には、実際は感染していても陰性になってしまう可能性があります。
 ただ、発症2日目から9日以内の有症状者については、抗原検査キットとPCR検査の結果の一致率が高いため、鼻咽頭拭い液による検査は、発症2~9日目までの患者について、検査結果が陰性なら、陰性の可能性が高いとされています。
 抗原検査が受けられる場所・医療機関は、抗原検査キットのある医療機関で可能になっています。
 検査方法は、鼻の粘膜またはのどを綿棒で拭って、検査します。検査から結果まで約30分程度です。
 PCR検査、抗原検査はウイルス自体を検出して有無を調べる検査ですが、抗体検査はウイルスに感染したときに人間の体内で作られる抗体を検出して有無を調べる検査です。
 人の免疫では、ウイルス粒子にある特有の成分で免疫細胞が認識し、抗体が作られます。感染から1週間程度で産生されて6週間後に低下する「IgM抗体」と、感染から1~2週間程度から産生され、年単位で持続する「IgG抗体」を検出します。
 精度については、検査時期や検査方法によりますが、感度が66.0~97.8%まで、特異度が96.6~99.7%と考えられています。現在、日本国内で体外診断用医薬品として承認を得た抗体検査はありません。抗体がウイルスに対して有効な抗体かどうかも今後の検討課題になっています。つまり、抗体検査が感度100%、特異度100%でない限り、感染していても抗体が検出できない人もいれば、感染していなくても抗体があると判断されてしまう人もいるということです。
 検査方法は、血液検査です。
 抗体検査は現時点では承認されていませんので、検査可能な医療機関が限定されています。さらに保険診療ではありませんので、費用もすべて自費となります。
 以上のように、一言で「新型コロナウイルスの検査」と言っても、「PCR検査」「抗原検査」「抗体検査」はそれぞれ異なります。どの検査がよいかは、発症時期やその時の状態による検査判定までにかかる時間などを考慮し、メリット・デメリットを考えて判断することになります。
 いずれの結果も100%の信頼性とは言えない点も含め、どのような目的でその検査を受けるのかを正しく理解しておくことも大切です。
 最後までお聞き頂きありがとうございました。