感染症と薬剤耐性菌について
2019年4月放送
白河厚生総合病院
臨床検査技師 山田 裕輔
ラジオの前のみなさん、おはようございます。
わたしは白河厚生総合病院に勤務する臨床検査技師の山田と申します。
臨床検査技師は皆さんが病院で受ける血液検査や心電図検査など、
多くの検査を専門に行っています。
私達は普段、患者さん達と接する機会はあまりありませんが、
検査室の中で皆さんの体の異常を見つけるべく、日々頑張っております。
ぜひ、このラジオをきっかけに、臨床検査技師というお仕事を知って頂ければと思います。

さて、ここからが今日のお話の中心です。
突然ですが、小さなお子さんに
お外で遊んだあと、なんで手を洗うの?と聞かれたらみなさんは どう答えるでしょう?

きっと こんな風に答える方がいるではないでしょうか
手には、ばい菌が付いているから洗わなきゃいけないんだよ と
私もこのようなお話をするとおもいます。

このばい菌という言葉は、私達に悪い影響を与えるものとして使われますが、
みなさんは実際、ばい菌についてどのくらいご存じでしょうか?
今回は、このばい菌に関連するお話をさせて頂きます。

皆さんがばい菌と呼ぶものは、医療においては主に、細菌とウイルスの2つを指します。
細菌には乳酸菌など、ヒトに良い影響を与えるものがいますが、
逆にヒトに悪い影響を与えるものも数多く存在します。

一方、ウイルスは細菌より発見されてから歴史がまだ浅く、研究が進められています。

この細菌やウイルスが、ヒトの体と接触し、定着する事を感染と呼びます。
菌やウイルスに感染すると、人の体は敵として判断し、倒そうとする反応が起きます。
その反応が発熱などの症状であり、感染により引き起こされた病気を感染症と呼びます。

皆さんは食中毒という病気をご存じだと思います。
食中毒の多くは、感染性胃腸炎と呼ばれる感染症であり
細菌とウイルスが原因の場合がそれぞれあります。

細菌による感染性胃腸炎の原因として有名なのが
サルモネラやカンピロバクター、腸管出血性大腸菌O157と呼ばれるものです。
これらの細菌は 肉や魚などの食べ物に、もともと存在する事が多く、
加熱により死滅して、人に害が無くなります。
しかし十分に加熱をしなかったり、生で食べた場合に 生きた細菌に感染して、
感染症を引き起こします。

一方、ウイルスの代表的なものは、ノロウイルスによる感染性胃腸炎です。
激しい下痢と嘔吐を引き起こす、ウイルス性の感染症です。
食べものでは、貝類のカキが原因として有名ですが、
実は食べもの以外から感染をする事が問題になっています。
ノロウイルスは、感染した人の便に排泄されるので、
そこから人の手などを介して、ヒトの生活環境に蔓延する事があり
多くの人が感染する、とても注意が必要なウイルスです。

つづいては感染症の治療に関するお話をさせて頂きます。
感染症に使われるお薬と言えば、抗菌薬や抗生物質が有名です。
皆さんもこの名前を聞いたことがあるではないでしょうか。

抗菌薬や抗生物質の抗という漢字は物を抑え込むという意味をもち、
抗菌薬は菌を抑える薬、抗生物質は細菌の活動を押さえる物質として
細菌を原因とする感染症の場合に効果を発揮します。

ですから、ウイルスには効果は無く
さきほどお話しました、ノロウイルスの感染性胃腸炎の治療には使われません。

ここまでのお話で、感染症は細菌とウイルスの2つの原因によって引き起こされ、
抗菌薬や抗生物質は細菌感染症に効果がある事がお分かりいただけましたでしょうか?

最後は
今現在、抗菌薬が効かない細菌が誕生し、世界中を悩ませているというお話しです。
抗菌薬や抗生物質は感染症の原因菌の種類に合わせて、開発が行われ、
多くの患者さんを救ってきました。

しかし、細菌はただ、お薬にやられているだけでは無いのです。
細菌は、抗菌薬に抵抗する為の方法を自分で生み出し、
現在、抗菌薬の効かない細菌が数多く誕生するようになりました。
それを私たちは薬剤耐性菌と読んでいます。
そしてこの薬剤耐性菌の中には、人間が開発した全ての抗菌薬が効かない菌が
誕生しているのです。
全ての抗菌薬が効かないとなれば、治療する方法がないということになります。

皆さんの中に、病院で風邪と診断されたとき、
お医者さんから、念のためと抗菌薬を処方されたり、
逆にみなさんから抗菌薬を希望して、処方してもらった経験はないでしょうか?
また、ご自宅などで体調を崩した際に、風邪だろうとご自分で判断をして、
前に貰った抗生物質をとりあえず飲んでみた などという経験はありませんか?

このような場合にも抗菌薬は効果がありません。
なぜならば、風邪はウイルス感染が原因と考えられているからです。
細菌感染症を起こしていないのに、抗菌薬を使ってしまうと
無駄に菌をやっつけてしまい、体の中に薬が効かなかった薬剤耐性菌だけが残り
逆に悪さをする可能性があります。

ですから、今後はわれわれ医療従事者と患者の皆さんが
共に正しい知識のもとで抗菌薬を使っていく必要があります。

現在、私は病院の検査室で
患者さんの検体から 感染症の原因菌を見つける検査と
その細菌に効果のある抗菌薬を探す検査を行っています。

ぜひ皆さんには風邪や下痢などの症状をご自分で判断はせず、
感染症が疑われる際は、きちんと医療機関を受診して頂き
原因となる細菌を検査により見つけ出し
正しく抗菌薬を利用する事が、みなさん自身の早期回復と
薬剤耐性菌の問題の解決に繋がっていくと思います。

今回のお話により、
感染症や薬剤耐性菌の問題を、皆さんにすこしでもご理解いただけたら幸いです。

皆さんの健やかな生活を祈念し、私のお話しを終わらせて頂きます。
朝早くからお付き合いいただきまして、誠にありがとうございました。



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