骨粗鬆症について
2023年3月放送おはようございます。JA福島厚生連 農村健診センターの緑川です。本日は、骨粗鬆症についてお話をさせていただきます。 骨粗鬆症は、骨量が減って骨がスカスカの状態になり、もろくなって骨折しやすくなる病気です。骨量の目安となるのが骨密度です。 骨粗鬆症の成因としては、20歳代までに獲得する最大骨量が少ないことや、成人後に骨形成と骨吸収のバランスが破綻することがあります。 最大骨量とは生涯のうち最大になる骨量で、成長期を過ぎて20歳前後で到達します。その大きさには遺伝的要因が最も影響し、成長期の栄養や運動、内分泌ホルモンなどが関与します。成長期に過度なダイエットをすると本来獲得すべき骨量が得られません。 成人後は、閉経による女性ホルモンの低下、動かないことによる加重運動の減少、加齢が原因となり、骨粗鬆症が発症します。骨粗鬆症の有病者数の8割は女性で、2割が男性です。 骨粗鬆症では、骨強度が低下するため、脆弱性骨折をおこします。脆弱性骨折とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力によって発生する骨折です。脊椎椎体骨折や大腿骨近位部骨折を起こすと、日常生活動作が低下し、さらに生活の質が低下し、高度な障害では寝たきりに至りますし、生命予後も悪くなります。さらに、一旦脆弱性骨折を起こすと、次の骨折を起こし易くなります。 一方、日本では、少子高齢化が急速に進行してきており、少数の若い世代が、多数の高齢者のケアを担当することになると、社会的に大きな負担となります。要介護の原因には、認知症、脳卒中、衰弱、骨折・転倒、関節疾患などがありますが、骨折・転倒、関節疾患を合わせると26.3%で最多となります。介護予防対策には骨や関節の障害への対応が大事になります。 このように、骨粗鬆症は、ご本人の生活の質を下げるだけでなく、社会の負担も大きくするため、骨粗鬆症や脆弱性骨折の予防が重要です。 しかし、日本には1400万人の骨粗鬆症患者がいると推計されていながら、薬物治療をうけている患者さんは多くありません。骨粗鬆症は沈黙の疾患と言われ、症状がありません。過去に脆弱性骨折をおこしたことがない方は、自分は大丈夫と認識しがちになります。しかし、骨粗鬆症による骨折を予防するには、無症状の人に骨粗鬆症の診断のための骨密度検査を受けてもらう必要があります。 特に、骨密度検査が勧められる人としては、やせている高齢の女性、3~4cm以上の身長低下のある方、腰のまがっている方、以前、骨折したことのある方、親が大腿骨近位部骨折の既往のある方、副腎皮質ホルモン剤治療中の方、関節リウマチ、糖尿病、COPD、慢性腎臓病などの方、喫煙や過度の飲酒をしている方などがあります。 骨粗鬆症の治療は薬物治療が行われます。内服薬と注射薬があり、投与間隔も毎日のものから年に一回のものまであり、病状や薬剤の有害事象や患者さんの受け入れやすさから選択されます。いずれも、長期に治療継続することが必要です。 また、薬物療法だけでなく、食事療法や運動療法も重要です。 食事は、骨粗鬆症および骨折のリスクが高い高齢者では、栄養状態の不良な方が多いことを考えますと、まずは、身体の栄養状態を良く保つために、必要かつ適正な食事量の確保が必要です。さらに、65歳以上の方では、適正な量と質のたんぱく質を摂取することが必要で、肉、魚介類、鶏卵などの動物性食品の摂取が勧められます。 とくに注意すべき栄養素についてですが、まず、カルシウムは、骨の重要な構成成分であり、骨粗鬆症の予防、治療に不可欠です。カルシウムを多く含む食品には、牛乳、ししゃも、小松菜などがあります。次に、ビタミンDも重要です。ビタミンDが多く含まれる食品には、さけ、卵黄、きくらげなどがあります。次に、ビタミンKも欠かすことができません。ビタミンKを多く含む食品には、納豆、モロヘイヤ、ほうれんそうなどがあります。 次に、運動療法についてです。加齢に伴い、運動器の障害によって移動能力が低下した状態をロコモティブシンドローム(ロコモ)と言います。脆弱性骨折の予防には、転倒予防が不可欠であり、ロコモ対策が転倒予防につながります。 ロコモ対策としてロコモーショントレーニング(ロコトレ)があります。ロコトレには、スクワットと片脚立ちがあります。スクワットは、後ろに椅子をおくことで、転倒予防にもなりますし、正しい姿勢のスクワットになりやすくなります。一回の動作を10~12秒程度でゆっくりと行い、1セットを5~6回とし、1日3セットで毎日行います。片足立ちは、バランスを鍛えるとともに、支えている側の下肢の支持性を高める運動で、転倒防止に有効です。左右1分間ずつ1日3回行い、ふらついた時に支えられるように、机や壁の近くで行うようにします。 地方自治体では、40~70歳の女性を対象に5歳刻みの節目検診として骨粗鬆検診が行われておりますが、受診率は低いです。農村健診センターでも、JA福島共済事業団が主催する健康増進活動の中で、超音波法による骨密度測定をさせていただいております。みなさまには、骨粗鬆症検診を受けていただくようお勧めいたします。 お話を最後まで聞いていただきありがとうございました。