これからの季節特に気をつけたい心不全について
2023年10月放送ラジオをお聞きの皆さんおはようございます。本日担当します、会津美里町の高田厚生病院で理学療法士として働いている横澤と申します。 本日は心不全についてお話ししたいと思います。皆さんも一度は聞いたことがあると思いますが、心不全は「心臓が悪いために息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなって生命を縮める病気のこと」と定義されています。分かりやすく言うと「心臓がギブアップした状態」といえます。 いま日本では心不全患者は毎年約1万人ずつ増加し、「心不全パンデミック」という言葉が生まれるほど急激に増えているそうです。「パンデミック」とは感染症や伝染病が大流行した際に使われ、昨今のコロナ禍で良く耳にするようになった言葉の1つです。そんな言葉が生まれた背景にあるのは「高齢化」です。現在日本は世界に例を見ないスピードで、高齢化が進んでいます。2020年の平均寿命は女性が87.74歳、男性が81.64歳と、いずれも過去最高を更新しました。世界的に見ても女性は世界1位、男性は2位と高レベルとなっています。心臓は生まれてからほんの一瞬も休むことなく動き続けています。年齢を重ねると、心臓に過去のダメージが積み重なり、その結果ギブアップするのも当然といえるかもしれません。 では、心不全の原因ともなるその「ダメージ」とはなんでしょうか。日本循環器学会によると、血圧が高くなる病気である「高血圧」、心臓の筋肉自体の病気である「心筋症」、心臓を養っている血管が詰まるなどして起こる心筋の栄養障害、心臓の中にある弁の不調で起こる弁膜症、 脈が乱れる病気である「不整脈」など。これらが心臓にダメージとして蓄積し、全身に血液を巡らせることができず、心不全の症状が出現します。 続いて症状についてです。心不全の初期によく見られる症状が、運動時の息切れや、両足、特に膝下の脛や足首、足の甲のむくみです。むくみは両方の足に出現することが特徴です。その他には、「疲れやすい」という症状もあります。これらは心不全でなくとも生じる何気ない症状のため、見落としてしまうことが多くあります。またこれらの症状は寒くなるこれからの季節に悪化しやすいともいわれています。この症状をそのまま放置していると急速な体力の低下が起こり、最終的にはわずかな運動でさえも疲れを感じるようになり、ベッドで寝返ったり身体を起こしたりすることも大変になるため、生活全般に介護が必要な状態となってしまいます。少し振り返ってみましょう。階段を2階まで上がったときにドキドキが増えていませんか?今まで平気だった距離でも歩くと息が切れていませんか?靴下の跡が強く残るような足のむくみはありませんか?休んでも疲れを感じることが増えていませんか?こんな症状があり少しでも不安を感じていましたらかかりつけの医師にご相談ください。 心不全にならないためにはどうすれば良いでしょうか。これは先に挙げた心臓にダメージを与える病気に対する適切な治療と、食事 運動など生活習慣の改善により予防することができます。具体的には禁煙、減塩、節酒、適度な身体活動が重要です。 この中で今回は運動についてお話をさせていただきます。健康づくりのために推奨されている運動量の目安として18歳~64歳では歩行またはそれと同等の身体活動を毎日60分、65歳以上では寝たままや座ったままにならなければどんな動きでも良いので毎日40分以上行うこととされています。ここでいう歩行と同等の身体活動としては犬の散歩、家の掃除、自転車に乗ること。スポーツとしてはボウリングや社交ダンス、ゴルフ、卓球といったものが近い運動の強さとして挙げられています。買い物をする事、お子さん・お孫さんと遊ぶことも十分な運動になると思います。これらの身体活動でも大変だなと思われる方であれば、今よりも少しでも運動を増やしてみる。例えば10分多く歩くだけでも良いです。テレビでは座ったままできる体操なども紹介されています。自分の生活スタイルと趣味や興味・関心に適した運動を組み合わせるのも、続けやすい健康習慣となるかもしれませんね。なお、持病により運動に不安のある方はかかりつけの医師に相談してみてください。 これから冬に向け寒くなっていきます。温かくおいしい食べ物が増え、外に出る機会が減り健康が気になる季節となります。年末の大掃除など今から計画的に行い、日々の運動としてみるのはいかがでしょうか。 簡単ではありますが、本日は心不全についてお話しをさせていただきました。短い時間でしたが、ありがとうございました。