健康アドバイス詳細

  1. HOME
  2. 健康アドバイス
  3. 健康アドバイス一覧
  4. 認知症の予防について

認知症の予防について

 おはようございます。JA福島厚生連 農村健診センターの緑川と申します。今日は、認知症の予防についてお話させていただきます。   認知症は誰もが関わる可能性のある身近な病気となっており、2025年には65歳以上の高齢者では患者数は約700万人となり、高齢者の5人に1人が認知症になると推計されております。現在、高齢化に伴う認知症の増加は世界共通の課題となっています。  認知症には、いくつか種類があり、最も患者数が多いのが、アルツハイマー型認知症で約6割、次に多いのは血管性認知症で約2割です。認知症の種類により症状の出方は少し違ってきますが、どれも、認知機能症状や行動・心理症状によって、自立した生活が送りにくくなります。  現在でも、一部の種類を除いて認知症を発症してしまうと進行のスピードを遅くすることはできても、発症前の状態に戻すことはできません。  近年、認知症予防の研究が蓄積され、生活習慣などを改善することで、認知症の発症リスクを40%減らせることが示されています。現在、確実にわかっているその修正可能な発症リスク因子は12因子あり、それらをすべて予防できれば認知症の発症を40%減らせるということになります。  その12のリスク因子ですが、45歳未満の若年期では、教育歴が7%認知症の発症に関与しています。45~65歳の中年期では、難聴が8%、頭部外傷が3%、高血圧が2%、過剰飲酒が1%、肥満が1%、66歳以上の高齢期では、喫煙が5%、抑うつが4%、社会的孤立が4%、運動不足が2%、大気汚染が2%、糖尿病が1%関与しています。  難聴(聴力低下)は、脳への情報量を減らすとともに、コミュニケーションを取りづらくして認知症のリスクを高めます。若いうちから大音量を避け、耳を酷使せず休ませることや、定期的聴力検査をし、聞こえにくさを感じたら早めに耳鼻科を受診することなどが勧められます。  社会的に孤立すると、外に出て他者とコミュニケーションを取るという脳をフル稼働させる行動が減ってしまいます。趣味などで、意識して楽しく外出できる用事をつくることなどが勧められます。  気分が落ち込んで、なにをしても楽しくない、何もやる気にならないなどと感じてしまうような精神状態を抑うつ気分と言いますが、これが長く続くようなら認知症予防に良くありません。ストレスなどによって一時的にそのような気分になってもほとんどの場合は数週間で改善しますが、つらい状態が2週間以上つづいているようなら、心療内科などへの相談も必要となることが多いです。  喫煙は、認知症の大きなリスクです。禁煙は、開始日を決めて一気にする方が、段階的に減らしていくより成功しやすいです。離脱症状は一週間ほど出ますがそこを超えれば自然にタバコを求めなくなります。大気汚染に関しては、日本ではあまり問題にならないようです。  高血圧、糖尿病、肥満は、生活習慣病と言われますが、これらを、生活習慣の改善によって予防し、しっかり治療していくことが大事です。特にメタボリックシンドロームの方は、まず内臓脂肪を減らしましょう。  運動は、脳を活発に働かせますし、運動すると神経細胞を元気にする物質がよく出るようになって認知機能を高めると言われています。運動する時、頭を一緒に使うとさらに良いです。例えば、ただボーっと歩くのではなく、歩数を数えて決まった歩数が来たら早歩きするとか、建物の数を数えたり、花の名前を当てたりしながら歩くなどです。  頭のけがをしないようにすることが必要です。転倒予防や、車やバイク・自転車に乗る時のシートベルト、ヘルメットの着用なども対策になります。  お酒の飲みすぎは認知症リスクになります。飲酒される方は、一日平均アルコールに換算して約20gまで、日本酒なら一合、ビールなら500mlまでにしましょう。  認知症予防に良い影響が期待できる食事に関してですが、何か特定の食品や栄養素をたくさん摂ればいいということはありません。やはりバランスのとれた食事が前提となります。食事のパターンとしては、全粒穀物、野菜、果物、乳製品、オリーブオイルを毎日とり、魚や豆類、卵、脂身が少ない肉などを毎週食べる地中海食が良いと言われていますが、和食では、豆類や大豆製品、野菜、海藻類、乳類や乳製品を多く含み、米類は控えめとした献立のものなどが良いと言われています。さらに、意識して摂りたい栄養素としては、鰯や鯖などの青魚に多く含まれる脂肪(オメガ3脂肪酸、DHA、EPA)、骨の健康を守るビタミンD、抗酸化力の高いビタミンEやベリーやココアなどのポリフェノールを多く含む食品があります。  教育歴も認知症リスクです。若いうちに獲得した認知機能の高さを、認知予備脳と呼び、認知予備能が高いと、認知症になるのを遅らせることができます。脳は生まれてから成人する少し前(青年期後半)にかけて大きく成長します。この期間にしっかり勉強しておくことが認知予備能を高めます。中学卒業までの教育が基準となっていますので、ほとんどの日本人は基準をクリアしています。若いうちの学習で認知予備能を高め、年を取ってからも知的好奇心を持ちつづけ、さまざまなことに興味を持ちチャレンジしていくことが、認知症を遠ざけると言われています。  以上、参考にしていただいて生活習慣の改善に役立てていただければと思います。