みんなで創り上げる 認知症の方に寄り添うやさしい地域づくり
2024年4月放送皆さん、おはようございます。 四月も半ば過ぎ、過ごしやすい陽気になりました。いかがお過ごしでしょうか。 私は、JA福島厚生連 白河厚生総合病院の認知症看護認定看護師 小室眞紀と申します。 本日は「みんなで創り上げる 認知症の方に寄り添うやさしい地域づくり」についてお話させていただきます。 皆さんもご存じのとおり日本は世界一の長寿国です。令和7年 団塊の世代が75歳を迎える2025年は、総人口に対して65歳以上の割合、高齢化率が30%を越えます。2000年の高齢化率は17.4%でしたからその急速な増加が数字に表れているのがよくわかります。2025年以降も後期高齢者は増え続け2040年にほぼピークに達します。その一方で人口減少が加速していく超高齢社会を迎えます。年齢が高くなるとともに認知症の発症率も上がり、90歳以上になると約半数以上が認知症に罹患するという研究結果もでており、2025年には認知症の方が700万人、65歳以上の5人に1人が認知症という時代になります。 ここで、認知症についてご説明したいと思います。認知症とは、正常に発達した認知機能が何らかの障害によって低下し、日常生活に支障をきたすようになった状態のことです。認知症の原因は脳の病気です。原因疾患でもっとも多いアルツハイマー病では、脳に異常な蛋白がたまり、脳の細胞がダメージを受けます。ダメージをうけた脳の中枢神経の認知機能に関わるさまざまな部位の神経細胞、ネットワークの消失や機能低下が起ります。これは脳梗塞や脳出血で傷ついた脳細胞にも起こりうることで、その場合は脳血管性認知症と呼ばれます。 みなさんも報道等でご存じかと思いまずが、2023年12月、軽度認知障害、軽度アルツハイマー型認知症の進行抑制薬、レカネマブが承認され、県内でも投与開始されました。投与基準や施設基準等まだハードルが高い薬ですが、アルツハイマー病の治療薬開発にとって大きな転換点であることに間違いはありません。今後さらなる研究が進み、より身近な治療になることが期待されています。 さて、認知症には様々な症状があります。みなさんになじみがあるのは「物忘れ」がひどくなるということでしょう。認知症のない方でも、年を取れば物忘れが多くなりますが、認知症の方のもの忘れとはすこし違います。たとえば、昨日の夜ごはんを聞かれたときに、老化による物忘れであれば「なにを食べたか忘れた」「ヒントがあれば思い出す」という状態ですが、認知症の方は「食べたことを覚えていない」という状態です。出来事が記憶としてまったく残っていないのです。そのほかにも物事の段取りが組めなくなったり、ものの距離感や位置関係、顔の判別ができなくなったりなどの症状があります。認知症は進行するほどご本人に自覚がなく、周りにいる人が異変に気付くケースが多いでしょう。症状の例として、 ・家事や片付け、薬の管理、着替えなど今までできていたことができなくなる ・何度も同じことを言う ・怒りっぽくなった、頑固になったなど性格がかわった ・以前あった関心や興味がなくなった など日常生活で「おや?」と感じる場面があると思います。そういった場合は、ぜひかかりつけ医や近医に相談していただきたいと思います。現在、認知症の根本的な治療法はありません。しかし、認知症の進行を緩やかにする薬の使用や環境を整えることで、ご本人やご家族の不安、負担を軽減することができます。 近い将来、65歳以上の5人に1人が認知症をもつ人になると予測されています。社会全体が認知症についての正しい知識をもち関わり方を知り、認知症の人の気持ちを知る。一番は認知症に対する偏見をなくすことです。みんなが温かく受け入れることができれば、住み慣れた地域、住み慣れた家で生活する時間を長くすることができるでしょう。余生を語る時間をゆっくりとることもできます。 2005年から、厚労省では、地域で認知症の人やその家族に対してできる範囲で手助けする「認知症サポーター」を全国で養成し、「認知症高齢者等にやさしい地域づくり」に取り組んでいます。2023年12月現在、全国で約1510万人、福島県では20万人の方が認知症サポーターとして活躍されています。認知症サポーターは養成講座を受ければ誰でもなれますので、お住いの自治体事務所に問い合わせてみてください。家族や近隣の方、もしくはご自身が認知症になっても、安心して穏やかに生活できるような社会を一緒に創り上げていきましょう。