「住環境」について
2026年5月放送農家の皆さん、ラジオをお聞きの皆さん、おはようございます。 私は東白川郡塙町にあります、JA福島厚生連 塙厚生病院併設 介護老人保健施設 久慈の郷作業療法士の矢吹彰浩と申します。 今回は「住環境」についてお話したいと思います。 地域で安心した生活を営み、さまざまな社会生活に参加するには、生活の拠点となる住環境整備が欠かせません。「介護保険制度に関する世論調査」では介護が必要になったときに介護を受けたい場所を「自宅」と答えた人は全体の37.3%となっています。このように介護保険制度が整備された現在も「最後まで自宅で生活したい」という方は多いと思います。 住環境を整備すると聞くと大掛かりな話に聞こえてしまいますが、少しの工夫で普段の生活の安全を保ち、過ごしやすい環境に変えることもできます。例えば家電やコタツなどの配線ケーブルはつまずいて転倒の原因となることもあるため、束ねてまとめたり延長コードを 使って導線を避けることで歩きやすい環境を作ることができます。また、毛の長いカーペットをお使いの方もいるかと思いますが、カーペットは歩く際に転倒を引き起こすこともあるため注意が必要です。転倒が起きてしまう場面は日中だけでなく、夜間の場合も考えられます。高齢になると就寝中にトイレに行くことも増えるかと思います。夜になると部屋と廊下などの明るさの違いに目が慣れるまでの少しの間に照明スイッチを探して転倒するという場合もあります。廊下の照明はセンサー式で人が通過すると自動で点灯するものを設置することもおすすめです。 最近ではバリアフリー対応の住宅も増加してきましたが、全住宅に占める割合はまだ少ないのが現状です。日本の木造住宅には「玄関の敷居や上がり框、廊下と部屋、脱衣室と浴室などの場所で段差が多い」ことや「床座といって畳など床に座って生活動作を行うことを基本としている」ことなどさまざまな特徴があります。これらの特徴が年齢を重ねながらも「最後まで自宅で生活したい」という希望に支障をきたすことがあります。 しかし、このような日本の木造住宅の問題点を解決し住環境を整備することでも「最後まで自宅で生活したい」という希望に寄り添えることがあるかと思います。日本の木造住宅では「段差が多い」という点については階段や上がり框などの「大きな段差」よりも廊下と部屋の間などの「小さな段差」でつまずき転倒してしまう方が多いと言われています。つまずきそうな小さな段差がある場所には屋内用の小型スロープを設置することで解決できることもあります。スロープは屋外で設置する大掛かりなものというイメージが強いかもしれませんが、屋内用もあり自宅内での小さな段差の解消に役立ちます。 「床に座って生活動作を行うことを基本としている」という点については、テーブルや椅子、ベッドなどを使用することで床に座る生活動作を減らし足腰への負担を軽減して生活することができるようになります。 その他にも介護保険制度を利用することで手すりの設置や段差解消など大掛かりな住宅改修が必要な場合は、事前に申請し費用の一部を給付により補うことも可能です。また杖やシルバーカーなどの歩行補助具やベッド、置き型の簡易手すりなどの福祉用具をレンタルによって使用することもできます。福祉用具のレンタルを利用することで、自分には合わないなと感じたときや必要なくなった場合に変更や返却ができることがレンタルの利点だと思います。 このようなサービスを利用しながら住環境を整備することでさまざまなメリットも生まれます。例えば、手すりを設置することで、自宅内を自由に歩けるようになり「精神的に自立できる」とともに「他の生活動作に対しても意欲が出る」ことも考えられます。今までは介護が必要だった場合でも住環境が整備されたことにより「介護の量が軽減する」あるいは「介護が必要なくなる」こともあるかと思います。そうなればご本人だけでなくご家族の安全・安心も確保することもできるかと思います。 このように住環境を整備することは「最後まで自宅で生活したい」という希望に少しでも寄り添えるとともにご本人やご家族にもメリットを感じていただけることもあるかと思います。そのお手伝いをすることも作業療法士の仕事の一つです。リハビリの専門職である作業療法士は運動指導なども行いますが、一人一人の生活に合わせて日常の全ての活動を支援することで「生活の質」の向上を目指す職種です。住環境の整備においては、福祉用具の選定や使用方法の指導、住宅改修の効果などについて助言することも可能です。住環境についてのお困りごとやご相談があれば、お近くの病院や介護施設などの作業療法士にお話ししてみてはいかがでしょうか。