市販薬と処方薬の違いについて
2021年10月放送ラジオをお聞きの皆さんおはようございます。高田厚生病院 薬剤科 薬剤師の澁川直久です。本日は「市販薬と処方薬の違いについて」についてお話させていただきます。 みなさん市販薬と病院などで処方される薬の違いをご存知でしょうか。病院などで処方される「医療用医薬品」は、医師による処方が必要なもので、「処方薬」と呼ばれることもあります。 処方薬は、市販薬に比べて効き目が強く、副作用の心配も大きい薬です。どの薬をどのくらいの量、どのくらいの期間とるべきかについては、医師がよく考えて決めています。医師や薬剤師によるフォローが欠かせません。また、同じ病気、たとえば高血圧や糖尿病などであっても、年齢や生活背景、症状などに応じて細かな薬剤選択がなされることが多くなっています。ですから、買える薬の種類や量を勝手に変更することはできません。仮に「たくさんお金を払うから」と薬局でお願いしても医師の指示で処方されてあるので無理ですし、「何度も薬局に来るのは面倒だから、たくさん処方してほしい」と頼んでも、処方せんに書いてある量しかもらえません。 それでは市販薬はどうでしょうか。ドラッグストアへ行けば、洗剤やトイレットペーパーと同じように薬が買えます。しかし、中には薬剤師の説明を受けてからでないと、買えない薬もあります。 市販薬は、症状が軽めの段階で使うことを目的としています。処方薬に比べると効き目も副作用も穏やかですが、どのような薬にも副作用の危険性があります。そこで、市販薬には副作用の危険性が高い順に要指導医薬品、一般用医薬品(第1類、第2類、第3類)というグループに分かれています。グループごとに、どのような資格を持つ人が、どのような手順で売らなくてはならないか、お店のどこに置かなくてはならないかといった決まりがあります。 詳しく説明しますと要指導医薬品と第1類の薬は、薬剤師の説明を聞いてからでないと売ってもらえません。店側には、書面を使っての情報提供が義務付けられています。だから、買う人が直接薬を手に取れないように、薬剤師のいるカウンターの後ろの棚や、カウンターのカギ付きショーケースの中に置いてあります。 第2類の薬は、薬剤師か、市販薬を販売する資格試験に合格した「登録販売者」になるべく説明をしてもらってから買いましょうという薬です。店側からの情報提供は「努力義務」となっています。第2類の中でも特に注意が必要とされる指定第2類医薬品は、薬剤師等がいるカウンターから7メートルの範囲内にある棚に置かなくてはならないという、置き場所の決まりもあります。 最後の第3類の薬は、説明してもらわなくても買える薬です。置いてある場所にも、決まりはありません。しかし何類の薬であれ、購入者が相談を希望すれば、店側はそれに応じる義務があります。 このように市販薬は、様々なものがありますが、市販薬を使用しても症状が改善しない場合は、早めに医療機関を受診しましょう。 市販薬の購入はあくまで自己判断です。判断に誤りがあれば、症状が改善しないばかりではなく、症状の悪化やほかの病気の見落としにもつながります。たとえば、胃腸薬を使用して胃の不快感をおさえこみ、「薬を飲んでいるから大丈夫」と漫然と使用を続けた結果、胃がんの発見が遅れてしまった、という事例もあります。 また、市販薬を使って副作用が起きる可能性があるので注意が必要ですし、症状が改善しない場合は、医療機関を受診しましょう。